※教師パロディ



職員室に戻ってみれば夕日が一面を包み込むように色を成していた。部活動の大会が近く、多くの先生はそれぞれの部の指導に当たっているからか人がいない。こんなんで防犯とか大丈夫なのかよ、と内心思いながら事務作業に入ろうと片手に持ってきた書類を開きながら、机の上を整理していく。ふと、奥の席の方に人影が見えて誰か他にいるのかとチラリと確認しようとした。そこにいたのは4月からの新任教師である折原臨也先生だった。だが、はっきりとその姿を捉えると机に突っ伏しているようにしか見えなくて、何か体調でも悪かったりするのでは無いかと書類から一時、手を離して近づいてみる。近くで見た折原先生は特に何かに苦しそうと言うわけじゃなく、ぐっすりと寝ていた。職員室で爆睡するなんてやつがいるんだな、と思って着ていたスーツを背中に掛けてやった。折原先生は新任の割りに要領がよく、直ぐに仕事内容も覚えてたし、生徒からの評判も良い優秀な先生だ。俺とは真逆のイメージしかなかったが、こんな風に無防備で寝ている様子を見たら疲れているんだろうなという思いと、親近感みたいなものを感じた。他に誰もいないようだし、他の先生が来た
ら起こしてやろうと思って隣の椅子を引っ張り座ろうとしたらいきなり腕を掴まれて引っ張られた。どうしましたか、と問う前に折原先生が近くに接近してきて唇に何かが触れた。


「俺、寝ちゃってたかな……ごめ……」


そこまで虚ろ眼で口走っていた折原先生は謝罪を最後まで言わずに固まった。何かを言おうと口が開閉するものの何を言うかの戸惑いが隠せていない。むしろ、何を言っても言い訳にしかならないんじゃないかとさえ思っているんじゃなかろうか。正直俺もびびった。同じ様に数瞬固まってしまったんじゃないかと思う。だが、相手が寝ぼけていたことくらいはわかる。いくらなんでもこの間違いは無いだろうと思いながらも俺は寝ぼけてやってしまったことなら仕方ない、記憶から無くしてしまえば良いだろうと言う結論を無理矢理頭の中で通した。


「気にしなくて良いですよ、忘れてしまえば良いことですし。折原先生って彼女いるんですね。」

「あっ、えっと、その……本当に申し訳ないです……。今度何か奢ります……。」


居心地が悪そうになっている折原先生を見て、俺がどこかに行けばいいんじゃ無いかと思ったので時間も丁度良いし、帰るかと自分の机に向かって、荷物を整理していると折原先生が近づいて来た。さっきの奢るって話を実行したいようだった。俺は別に寝ぼけくらいのミスで奢って貰おうなんて思っていなかったし、むしろ早く忘れたかったし笑いながら続けた。


「後輩に奢って貰う先輩ってどうなんですか。」


「じゃあ、先輩と後輩じゃなくて折原臨也一個人として平和島静雄さんに奢ります。別に平和島先生が言いふらすとかそんな風に思っているから奢るんじゃなくて本当に申し訳ないと思っているから奢りたいんです。」


真面目な顔つきで言われれば断る謂われなんて無くなってしまい、折原先生と駅までの道のりを歩いた。沈黙のまま歩くのは少々居心地が悪い。


「下世話な話ですけど、折原先生の彼女ってどんな人なんですか?」

「彼女……と言えるのかわからないですけどありふれていると思いますよ。」


少しも考える素振りを見せずにありふれているなんて表現を使うことに違和感を感じた。何かもっと他に表現の仕方ってものがあるんじゃないだろうか。どうしてそんな言葉を使うのだろう。気になりはしたが、なんて返したらいいかわからずにタイミングを逃してしまった気がしてならない。スタスタと俺の一歩前を歩くその姿を見ながら職場から近めの居酒屋に入り込んだ。折原先生はジョッキを二つ頼むと上着を脱いで脇に畳んだ。


「平和島先生は彼女いるんですか?」

「いるように見えますか?」


小さく笑いながら半分呆れ顔で告げれば意外だとでも言いたげに折原先生は目を丸くさせた。


「勿体無いですね、平和島先生は容姿端麗な外見をしているのに。女性は魅力を感じていないんですかね。」

「多分この人間離れした力のせいだとは思うんスけどね。」


直ぐに持ってこられたジョッキビールに折原先生が手をつけてちょびちょびと喉に嚥下されていく様子を見ていた。それに気がついたのかどうして飲まないのか尋ねられるだろうと思った。どうせ最初からわかっていた問いだ。


「すみません、俺、ちょっとビールの様な苦いものは嫌いなんですよね。」


先ほどのちょっとした仕返しだとでも言うようにその言葉を告げる。よく意外だと言われるので驚くかと思えば小さくニヤリと口角を上げられた。不審に思って、首を横に傾げるとテーブルに肘をついて折原先生はニヤリから満面の笑みを広げた。


「だって、平和島先生の唇、甘かったですから。」





【サンセット】


臨静。
教師パロをものすごく前に約束したので。最初はR指定にするつもりだったのに健全になりました。折原先生の彼女は勿論人間です。人、ラブなんで。


2011.08.24










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