※人外臨也企画様に提出します。


首から感じるシズちゃんの体温があまりにも冷たいのは今日が酷く大雨だからかもしれない。目を瞑っているからシズちゃんの表情なんてわからないけれど、きっと無表情に違いない。それがいい。ポタポタと言うよりもザーザーと全身にかかる雨が心地よくて、でも立ってしまえば濡れてしまった全身に嫌悪感を感じるだろう。首からシズちゃんの体温を感じなくなって目を開けると、シズちゃんは無表情なんかじゃなく目を細めていた。それからぽつりと本当に死なないんだな、と零した。


「シズちゃん、それは語弊があるよ。死なないんじゃなくて、生き返るんだ。時間が巻き戻ったかのように。だから今みたいに何もなかったかのようにシズちゃんに首を絞めつけられたら間違いなく苦しいし、間違いなく死んでいる。けど、それは元に戻るんだ。簡単に言えば、死んで、生き返って、死んで、生き返ってを繰り返してたってことなの。わかった?」


俺、折原臨也は所謂死なない人間。一番近い言葉なら不老不死。老いもしなければ死にもしない。人生の中である時から止まって動かなくなった時間から全く未来には進めなくなった。多分その体の状態から一秒も進んで無いんじゃないかと思う。死なない人間は化け物なのか。一世紀以上同じような姿から変わらないと逆に変化に興味を持つようになってくる。自分が自分の変化を知っていたのは21歳までの短い間。だからこそ人間の変化はどのようなものか、どんな風な人間がいるのか。気になって、気になって仕方がない。先程からシズちゃんが俺の上に乗ってるだけで何もしていない。ただ、同じように雨に打たれてずぶ濡れになっている。首に置いてあった手は俺を3回殺したあたりで俺の顔の両脇に移動した。


「シズちゃんはさぁ、俺を怖いとは思わない?それとも同じ化け物同士だから逆に好感が持てる?」

「てめえなんざ怖い訳ねえだろ。」


空を見上げる様にして目の前にいるシズちゃんを見ると彼はずぶ濡れな手で頬に張り付いた俺の髪を払った。そのまま近づいて来たかと思ったらピリッと痛みを感じた。その後直ぐに生暖かいものが触れて、シズちゃんの唇に赤い鮮血が付いているのを見て噛まれたのかと思った。シズちゃんは少しも驚かずに付けられた傷が塞がっていく様子を見ていた。シズちゃんの唇に付いていた血液も動いて頬に戻り、全部塞がったのか先ほどの髪を払うのと同じように頬を撫でた。


「そんなことしても同じだよ、傷は塞がるんだ。」


飽きるまでやれば良いじゃない、と続けて言えばニヤリと笑った。あーあ、これは面倒くさそうだ。風邪引いたらどうしてくれるんだ。そんな考えも気にしないのか、シズちゃんは小さくしょっぱいと呟いた。


「何が?」

「お前の血。」


肩口を片手で押さえつけながら、シズちゃんは一度も目を背けることなく俺を見続けた。先程の発言からしばらく沈黙が流れて、それが無駄に感じる様になり先に口を開いてみる。


「何それ。シズちゃんさ、俺の血の味なんか気にしてたの? 残念だけど、身体構成物質は全部普通の人間とおんなじだよ。」

「ちげえよ。」


ギリギリと地面に押し付けられている肩口が痛い。死なないからって痛みが無いという訳じゃないんだからあまり痛いのは止めて欲しい。正直、痛みつけられるのにはトラウマがある。そんなトラウマを植え付けた旧友を思い浮かべて、心の中で苦笑をする。じゃあ、一体何がしたかったんだろう、シズちゃんは。こっちが非常に嫌悪を示すような好機な表情をしているのが見えた。


「しょっぱいって思ったならよ、その分俺が食べたってことだよな。殴ろうが、切ろうが、首絞めようが死なないけどよ、お前を食い殺してやることは出来るってことだろ。死なないなんて言うからよぉ、てめぇを殺すっていう俺の最大の目的が果たせないかと思ったがよ、いくらでも方法はあるんじゃねーか。」


平然と言った言葉にギリギリと痛めつけられてる肩口のことも一瞬だけ忘れて、呆然とした、後に腹が捩れるんじゃないかと思うくらいに笑いに笑った。そして、その反応に対してシズちゃんが何、笑ってやがると言っているのが聞こえた。俺は空いている方の手で押さえつけているシズちゃんの腕にナイフで切りつけて、離させた。這いずるようにシズちゃんの下から抜け出して、距離を図る。


「俺さ、シズちゃんがだんだんだんだん人間らしい仕草をするようになってさ、イラついたんだよ。でもさ、杞憂だったみたい。君は紛れもなくただの化け物だった。俺なんか食べようとして腹下しても知らないよ?」


ずぶ濡れになった真っ白のシャツに戻らないシズちゃんの僅かな血がうっすらと滲んでいた。距離を縮めようと近づいてきたシズちゃんを振り切ってやるには更にずぶ濡れになるだろうね。




【実年齢壱百参拾八歳、人間換算年齢弐拾参歳、成長停止年齢弐拾壱歳】




2011,02,18

静臨。
人外臨也企画様に提出します。

題名の超中2さに惹かれて参加しました。人外臨也の醍醐味と言ったら人外だから臨也は人間が好き、もしくは自分が死なないだけで人外なのにあんな力を持った静雄が人間なんて、と嫉妬する筈なのにどちらにもかすりもしなくてすみませんorz

企画に参加出来て光栄でした!









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