※迷子の宮田さんとの合作になります。前編はこちら





恋は罪悪だと言うらしい。それを言った人物にとっては。俺は別に読書家ではない。国語の成績も理系教科に比べたら良いものでは無かったのだ。いつだか新羅がそう言っていたんだ。「恋は罪悪だ、君は感じた事が無いかい?特定の人間だけを対象に生きているのが辛くなるくらいの思いを。それが叶うか叶わないかは別として。」そう言った時の新羅がやけに達観していたのを覚えている。正直、何故、罪悪なのか俺にはわからなかった。なのに、そのままストンとその感覚に陥っていくのがズブズブと深く堕ちていくようで嫌だ。認めているのか、自分は。確かにそう思う気持ちもあるのかもしれない。長年、この体質に苦労させられてきた。この力は俺が恋をするのを罪悪だと言って、内側から迫ってくる。お前の様なやつが人を愛することなどおこがましいことであるに違いないとまで言われているようだ。過去の経験からか、感情の塊である様な俺がそれだけ、はそれ以来一切出さなくなった気がする。だのに、それが今、崩壊している。疑念ばかりがドロドロとしている今なら言える。恋は罪悪だ。阿呆みたいな線が一本ブチ切れた怒りと嫉妬と呼ぶしかない感情で溢れている。


「ぐ…!あ"っ…ひっ!あっ!…やぁ…っ」


ズブリズブリ。ゴプゴプ。聞き慣れない音を立てる臨也と嗅ぎ慣れない酷く青臭い匂いが薄暗い路地に広がる。辺り一帯それしか感じない。ツンと鉄臭いのが新たに広がったかと思えば、それは青臭いのと同じような位置から臭ってくる。息の荒い臨也の左手がナイフでガーゼの貼られていた筈の頬を切りつけた。それに動きっぱなしだったのを止める。


「シズちゃ…さぁ…、強姦とかさ…ゲホッ…ゲホッゲホッゲホッ…ははっ…犯罪だよ?罪に問われるよ?」


余裕なさげに、それでもひたすらに嘲るように言葉が降りかかる。相手の同意を得ずの性行為は確かに罪だ。一気に頭だけが冴えていく。でも、門田にキスをした臨也は同意を得ずとも罪には問われない。そんなのわかりきった事だ。だから、再び律動を始める。もう戻れない。恋は罪悪で出来ているのだ。ふと、臨也の顔を見ると涙が溜まっていることに気づいて、ひっきりなしに上がっていた喘ぎの中に小さく声が漏れていた。せめて、涙だけでも取ってやろうと指を近づけると叫ばれる声。


「シズちゃんは俺の事が嫌いなんだ!」

「嫌い…?」


嗚咽混じりで息をするのさえ苦しそうな臨也から出た言葉。足を抑えつけていた手を緩めて、頬に手を滑らせる。伝い落ちてきた涙と流れ出る白濁と鮮血が痛ましい。臨也全体を見る。嫌いだと言われて何も可笑しく無いだろう。何よりも臨也が好きであるのにも関わらずだ。だって、しょうがないだろう。お前は本当に俺が嫌いなんだから。好きばかりが先行している俺と違う。だが、流石に泣いている臨也でそのまま続けるのは抵抗がある。普段見せない、泣いているなんて顔が一番戸惑う。抜くと、ドロリと更に中からも流れ出る。それが止まない。


「このっ…バカ!死ねよ!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!さいっていだよ!ほんと!俺は君の事が好きだったのに!」


鼓膜が震える。
好き、という言葉。嘘だろ。嘘だと言ってくれ。じゃなきゃ、俺はただの嫉妬で好き合っていた人物を犯したことになる。恋は罪悪じゃ済まされない。カタカタと震える腕でそのまま臨也を抱きしめる。抵抗するものの微量な力であってそんなもの全く何も意味をなさない。


「臨也…、好き…だ…。好きなんだ。好きなんだよ。好き…だ…好き…。」


好きしか言えてなかった。言い訳がましいことしか言えないから他には何も言わなかったのに、好きの一言だけでさえ既に言い訳にしか聞こえない。


「嘘だ!」

「嘘じゃない!」


それでも、上がる当然の意見に俺は間髪入れずに否定の旨を表した。後悔と自責で埋まり尽くされる内情。抱きしめる力を強くして言葉を放つ。


「ごめん…、ごめんな。っ…うっ…ごめん…。」


口まで震えて何も言えない。ごめんしか言えない。臨也が小さくシズちゃんと呼んでくる。目が合わせられなくて、どうしようもなくて、ただ続く言葉を待った。


「ほんとに…?」

「本当だ…。」


しばらく、臨也が何かを考えながら身じろいだ。口を開けたり、閉じたり何かを言おうとしているのがわかる。俺はやはりそれをただ待っていただけだった。ぎゅう、と優しく支えるように抱きしめ直す。


「信じて…、あげる。好きってこと。じゃなきゃ、こんなに泣かない。震えない。許してなんかやらないけど、それも含めて好き…だよ…。」

「ありがとう…、ありがとう…。好きだ、臨也…。」


臨也が二本に増えた擦過傷に触れると頼りない姿であるもののいつもの笑いを見せた。


「これ、本当に彼女からの傷になったね。」


それを言った口はそのまま向かい側の口に吸い込まれた。




【サマー・レプリカ・ブルー】



(新羅ー。塗り薬ちょうだーい。)(上手くいったみたいで良かったよ、君達。)(新羅の手のひらで踊らされたとか最悪だね、覚えておきなよ。)(あんまり…無理するな…臨也。)





2010,09,15

後編。

なんだかものすごく申し訳ないです。久々過ぎて上手く書けませんでした、申し訳ないです。
相互サイト様の迷子の宮田さんとの合作でした。前編から見ないとわからない作りにしてみました。せっかくの合作ですしね。是非、前編から見てくださいね。

恋は罪悪は言わずもがな夏目漱石です。日本文学専攻では無いのですので、いろいろ自信が無いです。

みゃったん!合作ありがとうございました!遅くなって申し訳ないです!






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -