戌井と狗木/橋


キリキリと締め付けられるように脇腹が痛む。夢を見た。またあの時の夢。そこに至る経緯までは覚えているのに決定的なとこが思い出せない。吐きそうで仕方がない。ふと、手を口まで持ってきて両手で口を押さえれば、ゲホッゲホッ、と咳き込む声が聞こえる。それで、ふと下を向く。


「狗木ちゃん…。」

「…っはぁ…」


1つ息をついた狗木ちゃんは呆れた様な目を向けて俺の頬を平手打ちした。それでも痛いのは止まなくて、吐きそうなのも止まなくて、ただ呆然と仰向けで天井を見た。


「全然平気そうに笑いながら首を絞められるやつの気持ちも考えろ。馬鹿か、お前は。」

「そうやって馬鹿にされ続けてるよなぁ、俺。」


実際の意味で、いちいち感に触ったり、人を馬鹿にしているのはお前の方だと首筋を撫でながら狗木が言う。わかりきっているのになぜかやってしまったその行動にいつものようにペチと額に手を叩く。随分と楽になってきた痛みと吐き気に息を吸うと、目の前に銃口を突きつけられる。


「人を殺そうとしたんだから殺されても言い訳出来ないな。」

「そういうのを独りよがりって言うんだぜ?知らないのか?」


あと数センチという距離まで眉間に近づいたそれは酷く黒く見えた。右肩を押さえつけられて馬乗りにしていた状況から逆にされている状態だ。押さえつけられていない左手を痕がついた狗木の首筋まで持っていけば、ギリと爪を立てた。そこから流れ出る微量の血が指先を汚した。


「狗木ちゃんの血は赤い、か。」

「赤以外になんの色があるのか種類があるなら聞きたいがな。」


1つ短い辺鄙な銃声がなって、続けてカチカチカチカチと銃弾も薬夾も出ない銃を鳴らし続ける。それを可笑しいかのようにひたすら笑いが止まらなかった。ああ、狗木ちゃんもやるなぁ。


「知らないのか?狗木ちゃん、冷たいやつは血管に流水が流れているから血が青いんだぜ?」

「やはりお前は馬鹿だ。」


くすくす笑う姿にそれもなんだかいいかと笑う。数秒の後に仕返しとばかりに首筋をヒヤリと撫でられた。




2008,04,11

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ヤンデレのつもりだった。読み返したら残念なヤンデレだった。修正するつもりもないという。無題。








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