Happy birthday!!Masaomi Kida!!6/19!!


なんとなくだけど、心が弾む。それが誕生日と言うものだろう。ショーウインドウにある陳腐な字で書かれた、お誕生日おめでとう、の文字にさえなんとなく目が惹かれる。誕生日とはそういうものだと思う。せっかくだからその店に入り、ケーキの1つでも買って食べようか、などと思い店に入った。季節にはまだ少し早いがクーラーのかかった冷えた店内には幾人かの客がいて、俺もその人達と同じようにしばらく物色する。今更だけど、自分がすっげー浮かれてる事に気づく。一番安いやつ買って早くでよう、そう思って店員に声をかけようと上を向いた。


「すいません、紀田様でございますか?」

「え、あ、はい。そうですけど。」


話しかけようと思っていた店員から逆に話しかけられて、一瞬どもってしまったが、肯定の意を表す。何故、俺の名前を知っているのだろう。まさか、これが運命的な出会いに通じるのか!?いや、そんな考えは無いだろ、流石に。謎が多すぎてぐるぐると無駄に考えてしまった。店員は尚も続けて話す。


「バースデーケーキのご予約ありがとうございました。こちらが商品になります、氷の方は一時間保ちます。」

「え…、あの俺、予約した覚えは無いんですけど。」

「…失礼しますが、お客様は紀田正臣様で間違いございませんか?」

「間違い無い、です。」

「新宿からご予約いただきましたのですが、それは間違いございませんか?」


新宿。
そう言われて思い出したあの情報屋。まさかまさかまさか、いや、それはないだろう。きっと俺と同じ名前の人が予約したんだろう、と無理やり納得をつけようとした。


「代理で折原様よりお電話をいただいたのですが…。」


確定だ。
何故、俺なんかにバースデーケーキをくれるのかわからないが、貰いたくはなかった。断る旨を口に出すとキャンセル料を支払わなくてはならないらしい。所持金が足りず、予め代金が払われていたというバースデーケーキを持ち、事務所に向かう。直接理由を聞いてやると片手に持っているケーキが崩れないように歩く。


ピンポーンとチャイムを鳴らせば、早かったね、と満面の笑みで折原臨也が迎える。早々と理由を聞いて、出て行きたかったのだが、目の前に既に皿とフォークを出されていたことに気づく。


「…あんた、何が目的だ。」

「正臣くんの誕生日だからケーキ買って祝ってあげようかなって。」

「…は?」


だからぁ、ともう一度同じセリフを俺に放ってくる。折原臨也がただ俺を祝う為だけにケーキを買った?訳がわからない。そのくせ手に持っているケーキだけが色鮮やかで、それがどうしようもなく、どうしようも無かった。どんな形であれ、折原臨也なんかから誕生日を祝われるなんて癪に触るに決まっている。そんな筈なのに、それも悪くないと思う俺がいる現実が押し寄せてくる。唇を噛み締めて、わなわなと震える手を握りしめる。


「ふざけんな!俺はあんたになんか祝って貰っても嬉しくも何ともない!」

「そう…、それじゃ、無駄な事をしちゃったかな。」


その反応を見た折原臨也は薄っぺらな楽しそうな顔、予想通りとでも言った顔をした。その癖、開いた声はらしくなく軽い調子のものじゃ無かった。なんだよ、いつものように言い返せばいいのに。そしたら、俺も早くこんな所から去っていって、家に帰って沙樹におめでとう、って言って貰うつもりなのに。そんな言い方なんて卑怯だ。俺は知ってる癖に、こいつが如何に外道で如何に狂ったやつで如何に憎いやつなのか。でも、俺だって感情論ばかりの人間じゃない。そう思っていると、折原臨也が目線をケーキの箱に移動させていた。


「でも、ケーキくらい食べていってよ。これ味は保証するからさ。」


これも直ぐ断る筈だった。なのに俺の中の悪くないと思う俺が口を噤む。そして、別の言葉を口に出す。


「それ…、だけならいいですよ…。」

「じゃあ、早く座りなよ。紅茶でいいよね?」


それに返事をすると、ソファーに座る。紅茶を淹れた臨也さんは次に箱から出したケーキにろうそくを立てていた。あーでもない、こーでもない、と位置に何かこだわりがあるのかやけに時間が掛かる。それをただぼーっと眺めた。明かりが灯され、部屋が暗くなるとハッピーバースデーと歌を歌い始める。それが異様に恥ずかしい。こっちがただ見ているだけにも関わらずにだ。

「臨也さん、恥ずかしく無いんですか。」

「なんで恥ずかしがる必要があるのかわからないんだけど。」


切り分けたケーキを渡されて、残りは沙樹ちゃんと食べなよ、と箱に仕舞い直す。ぱくりと一口食べるとわかるケーキの美味しさ。程よく甘く、しつこくない。それに思わず口から出た美味しい、という言葉。


「ね、ここのケーキ美味しいでしょ?」


臨也さんはそう言って嬉しそうな顔でこちらを見た。






【シュガー・シュガー】



(あのね、正臣くん。)(…なんですか。)(誕生日おめでとう。祝って悪いね。)(…本当にその通りですよ。でも、ケーキは美味かったです。)(キスとさ、どっちが美味しい?)(沙樹のキスが一番です。)(つれないなぁ。)





2010,06,19

臨正…?

なんかただの正臣と臨也になってしまった…!
正沙前提の2人でお願いします、はい。ギリギリセーフですみません^^^^^^










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