卯月 桜(攘夷銀高)

戦が片付いた夜、高杉に連れられ俺達は二人で桜を見に行った。

月の光に照らされた桜並木は淡い紅色のその身を妖しげに輝かせていた。

「知ってるか?桜は死人の血を吸ってその身を紅く染めるって話」

今まで静かに上を見上げていた高杉がおもむろに口を開いた。

「な、何いきなり、こんな時間に怪談?趣味悪いねお前も。べべべ別におお俺は怖くないけど」

「怪談じゃねぇよ。昔読んだ書物に書いてあった話さ」

高杉は長い睫毛を瞬かせ視線の先を花から根元へ移動させる。

「戦で死んだ奴等の供養にと、そいつら埋めてからその上に桜を植えた――ってな」

にやぁ、と俺を脅かすように笑う高杉。

「怪談だよね?ね、それ俺を怖がらせるために言ってるよね?」

「暑苦しいわ離れろ変態」

引っ付いた俺をひっぺがそうと奮闘する高杉が可愛かったので少しの間引っ付いていると、しばらくして奴の動きが止まった。

「死んだあとにこんな綺麗に花を咲かせられるってならそりゃいいよな」

小さく小さくそう呟き、高杉は俺を見据えた。
その表情はどこか切ない。

「俺が戦死したらよォ、この身体を埋めて桜にしてくれ」

俺は目を見開いた。

「お前、そう簡単におっ死ぬような奴じゃねぇだろ」

声が震える。

「もしも、だ」

「……わかったよ」

渋々首肯すると、高杉は優美に微笑んだ。

「死んだ後くらい、綺麗に咲きてぇなァ」


「……ばぁか。」


死ななくたって、お前はもう十分綺麗だろうが。

死ななくたって、お前はいつ俺の指から滑り落ちて消えちまうかわからない、

















花弁みてぇなもんじゃねぇか。





*****



今回は花言葉よりも桜の下には死体が眠ってるっていうエピソードをメインに

暗くなってしまいすいません……

桜は色々種類があって、種類によって花言葉も違うのですが
“純潔”
“精神美”
“優美”
“淡泊”
“貴方に微笑む”
等があります

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