弥生 桜草(仔銀高)

「ごほっ、」

まだ幾分か肌寒さを感じるが静かに春が訪れている、そんな頃。

少年─高杉晋助は、静かに布団で本を読んでいた。

病状な彼は季節の変わり目に体調を崩しやすく、ここ数週間は外にも出ないで安静にしている。


コツン、と静かな部屋に音が響いた。

「またかよ」

どこか嬉しそうな表情をした彼は小さく溜め息をついて本を閉じる。

音の鳴った格子窓の方へ寝間着のままてくてくと歩いていくと、

「よう」

銀髪の少年、坂田銀時が立っていた。

「また来たのかよ」

「暇だから寄っただけ」

「今日はお前一人か」

「まぁな」

風邪をひいているにも関わらず、この友人はしょっちゅう見舞いに来る。

「まだ調子は悪ィの?」

「心配してくれるのか?」

高杉がそう返すと銀時は微かに赤くなって「ヅラと先生がな」と小声で言った。

「じゃあお前は?」

高杉が少し悲しそうにそう言うと、銀時は口ごもる。

「………っっこれ!」

そんな彼が高杉に突きつけてきたのは、淡い桃色の花。
桜によく似ている。

「?」

「河川岸に咲いてた」

「俺にか?」

「じゃなきゃ何だよ」

高杉は驚いて目を見開いた。

いつもはお互いに悪態ばかりついてしまうこの友人から花を貰う日が来るなんて。

「……桜草だな」

「桜草って言うのこれ?」

「知らないで摘んできたのか」

「お前桜が見たいって言ってたろ」

「え」

銀時は照れ臭そうに続ける。

「この時期に体を壊しやすいからあんまり桜を見れないんだけど今年は見たいって…ほら、その花なんか桜に似てるだろ」

確かに言った気がする。

「覚えてたのか」

高杉は嬉しくなった。

そんな他愛ない会話の一欠片を覚えていてくれたなんて。

「今年は、お前の調子が悪いんなら俺がおぶって行ってやるから花見しようぜ」

銀時がそう笑い、
高杉は顔を真っ赤にさせる。

「花見なら、もうしたさ」

自分のために摘んできてくれた綺麗な花を見ながら、
その人とこうして話が出来るのだから満足。


素直にそうは言えない高杉は、代わりに小さく「ありがとう」と呟いた。

「別に………」

「で、心配してくれてんのかよ」

「しなきゃこんなことしねぇ。」







桜草






お互いの相手への感情が恋だと気づくのはどれくらい先の事かはまだわからない。






*****


桜なのか桜草なのかわからない感じになってますが桜草と仔銀高です(-_-;)


桜草の花言葉は、

“初恋”
“希望”
“可愛い”
“少年時代の希望”
“憧れ”

等です
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