師走 ラベンダー(八高)

「銀八、これやるよ」

うちの生徒、学校一の不良高杉くんがくれたのは。

「……何これ?」

和風の小さな小さな袋に、何かが詰められている。

匂袋、みたい。

「匂袋だよ、知らねーのか?」

なんか最近、こいつはよく俺に物をくれたり俺に優しくしてくれたりする。

「なんでよりによって匂袋?」

今までは煙草(どうやって買ったの?)だとか、甘い物だとか、一番最初はシャー芯だった(小学生か!)。

まぁ実はこいつは俺が色んな障害をぶっ飛ばして一目惚れして片想い中な子である訳で、貰えば何でも嬉しいんだけど。

「いや、お前ヤニ臭いって生徒に言われてたから」

「マジで!?誰が!?」

「沖田とか神威とかその妹とか万斉とか来島とか」

「お前が付き合い持ってる生徒ほとんどじゃねーか!え、マジかよぉへこむわ」

匂袋を受け取って鼻に近づけると、どこかで嗅いだことのあるような甘い匂い。


「何の匂い、コレ?」

「当ててみろ」

にっこりとそう返ってきた。

俺がそんなもんに詳しいわけないだろ。

「タンポポ」

「アホか」

「桜」

「違ェよ」

「バラ」

「違うな」

「紅葉」

「花じゃねーし」

「いちょう」

「臭ェだろアレ」

知ってる名前を手当たり次第あげてみる。

「……しゃーねーな…」

突然高杉はうつ向いて、恥ずかしそうに教えてくれた。


「ラベンダー、だよ」


ふぅん、ラベンダーか。

聞いたことはある。

「花言葉は、答えを下さいとか、期待」


「…………?はぁ……」


花言葉、なんて女々しい事を。

というかさっきからどうしちゃったの高杉くん!?

「え、何でそんなこと───

「銀八、好き」

「……へ?」


何を言われたのかよくわからなかった。

目の前の真っ赤な男の子が上目遣いで俺を見つめていて、あれ、え?

『好き』の意味を理解したのはきっと20秒くらい後。

「返事(こたえ)を、くれ」

高杉がまた口を開いて、やっと思考回路が正常になった。

代わりに胸の鼓動が異常になった。

答えを下さい、
期待、か。

わかったよ、本音をくれてやる。

生徒だとか男だとか年下だとか、そんなものを忘れて。

「俺も好きだよ」


そう言うと、今までに見たことのないような笑顔を見せてくれた。


ぎゅっと高杉を抱きしめると、
告白の決心がつくまでずっと持っていたのかもしれない、ラベンダーの匂いがした。






ラベンダー






*****



12月のいい花が見つからず、とりあえずこれにしてみました

12月3日の誕生日花であり7月19日の誕生日花でもあるらしいので、この季節限定というわけではないそうです


ラベンダーの花言葉は、

“期待”
“沈黙”
“あなたを待っています”
“答えを下さい”

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