卯月 紫花菜(同級生銀高)

学校帰り俺は高杉を自転車の後ろに乗せて通学路の土手を走っていた。
入学式から一週間、高校でも高杉とクラスが一緒である。

後ろで俺のポケットの中のウォークマンを勝手に操作し音楽を聞いていた高杉がふと呟いた。

「ムラサキハナナ」

「……うん?」

突然何を言い出したのかと思った。

「ムラサキバナナって何よ何かの呪文?バナナ食いてぇの?なら俺のーー」

「バナナじゃねぇよてめぇのバナナすりおろしてやろうか」

「ヤメテ!ヒドイ!」

自転車ごと俺達は傾きかけたがなんとか持ち直し、後ろでそのスリルを味わった高杉が面白そうにくつくつと笑っていた。

「で?何つったの?」

「……左、見てみろ」

運転中だが少しよそ見をし左側を見ると、小川に沿って黄色やら紫やら白やら、春らしい色が若緑の上にほころんでいた。

「おー…春だな」

「あの紫の花見えっか?」

「あーああ見える見える」

「あれがムラサキハナナ」

「えーと……ふ、ふーん」

いや別に。花の名前とか興味ねぇし。どうリアクションすればいいわけ?ってかそれホントにハナナ?ナ一個多くない?

どれから言うべきかもしくはもっとこう何かリアクションすべきか悩んでいたそのとき。

「っ銀時!」

前を見ていなくてただでさえあんていしていなかった自転車が、道端の石に乗り上げバランスを思いっきり崩した。

「っどああああああ!!!!!!」

ガシャンと派手な音をたて、土手に自転車が倒れこんだ。
その音に負けないくらい派手に俺も自転車から落ちて土手に突っ込んだようだ。

青臭い草の匂いと視界に広がる春霞がかかった天気のいい空。

「ってあっ高杉!!お前大丈夫か! 」

俺は慌てて起き上がった。体が痛い。特にむこう脛。

「……ああ」

きょとんとした顔で高杉は道の上から土手に落ちた俺を見下ろしていた。安心した怪我はないらしい。
…怪我どころが制服に汚れのひとつもない。

話を聞くとら倒れると察した瞬間にぶらつかせていた両足を地面につけ、間一髪自転車から降りたらしい。
後ろの重さがなくなったからこんな派手な転び方したんじゃねぇか俺は!!

「せこいぞてめぇ!」

「大事な彼氏がケガしなくてよかったじゃねぇか」

「ほんとだよね!どっちかと言うと彼女だけどね! 」

「頭怪我したみてぇだな大丈夫か?いやもとからか」

「お前今度キスすると見せかけて頭突きしてやろうかオイ元はと言えばてめぇが横見ろって
「じゃあもうお前とはキスしねぇ」

「ごめんなさい」

こんな会話をしながらではあるが、奴は俺の下ろし立ての制服の汚れを払ってくれている。

「この花をな、昔自由研究でちょっと調べたんだよ」

ムラサキハナナ、とか言う花にちらりと目をやり高杉は口を開く。

「お前が花なんて調べんの?」

「悪ぃかよ」

あっちょっとムッとした。可愛い。

「いやいんじゃねーの?何?先生が花好きだったとか?」

高杉は驚いたように俺の服をはらう手を止めた。図星だったらしい。

「高杉はなんか色々詳しくていいよなぁ成績もいいし」

「そりゃあどうも。お前もちったあ俺を見習っていいんだぜ」

「俺はそんな傲慢なやつになんてさらさらなりたかねぇや」

高杉は俺の言葉に小さく笑い、俺の頭を撫でてきた。

「お前誰のお陰でこの高校はいれたと思ってんだ」

「俺が頑張ったからだよ」

いや嘘です。馬鹿な俺に懇切丁寧に勉強教えてくれた高杉のお陰です。

「クク、そうか」

「でもこれからも勉強見てくれや」

はえていたその紫の花を一房、高杉に差し出して俺は言った。
感謝してるぜ、これでも。







紫花菜


「なんかこの花変な臭いしねぇか」

「菜の花の仲間だからな」

「最初に言えや!」



*****



なんだかまとまりのない……!!!!
高杉に「はなな」っていってほしかったんです。可愛いでしょ?はななだって!はなな!

紫花菜の花言葉は、
“知恵の泉”
“熱狂”
“優秀”
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