▼睦月 カトレア(八にょ高)
「来てやったぜぇ、せーんせー?」
数年ぶりに会ったそいつは、いつの間にかにフェロモン撒き散らす別嬪に育ってやがった。
卒業生が母校をおとずれ世話になった教員に顔を見せることなんてよくある話で、彼女もその一人。
高杉晋助なんて男の名前で、いつも騒ぎの中心にいた女子生徒。
しかもこいつが売春なんてもんに手出してやがって、こいつを改心させるのに俺がどれだけ苦労したか。
俺が面倒みてるうちに、こいつはいつの間にかに俺のことを好きになったようで、何度も何度もあの手この手で迫られた。
「お前がもっといい女に育ったらな」
って言って追い返してきた。流石に生徒に手ぇ出すのは、なぁ。
そして今日、黒いトレンチコートの胸元にピンクみたいな紫みたいな花のブローチを添え、濃紫のショートヘアーを左に流し目を隠した、色っぽい姉ちゃんが俺のもとに現れた。
数年前と変わらず胸はそんなに大きくねぇが。
「高杉か、大学で調子はどうよ」
「そこそこ、まぁ悪くねぇぜ」
「ふーん」
「でさ、せんせ」
低い身長でめいっぱい背伸びして(これも昔からだ)、誘うように俺の肩に腕をかける。
三日月形につり上がる形の言い赤い唇。あ、やばい噛みつきてぇ、かも。
「今俺春も売ってねぇし、男もいないんだけど。」
「そりゃいいことじゃねぇか。奇遇だな俺も今のところ付き合う予定のある女はいねぇ」
「いい歳こいて寂しいやつだな先生。相手してやろうか?」
「俺みたいなおっさん今さら相手にしてくれるやついねぇんだよ。てめぇも趣味悪ィな、高杉」
少しずつ焦れてきた高杉の、細い腰に腕をまわす。
そのまま抱き締めると高杉が静かに息を飲む声がした。
遊びなれてたはずじゃなかったのかよ、こいつ…
あーいい匂い。シャンプーの匂いと、優しい花の匂い。
「香水なんてつけるようになったの、高杉」
「こいつだよ」
俺から少し体を離し、自らの胸の花を指差した。
「魔性の花」
どうだ、と笑って見せたその表情は、数年前の面影と新たな魅力を兼ね備えた美しい、小悪魔のような笑みだった。
カトレア
大人になった少女と魔法の花
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銀八先生とにょ高杉でした。
カトレアの花言葉は、
“成熟した魅力”
“あなたは美しい”
“魔力”
“魔性”
です。
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