師走 山茶花(大学生パロ)

「あー緊張すらぁ…」

「びびってんじゃねぇよ、ったく」

「お前だって内心びびってんだろ?」

「てめぇみてぇな臆病モンと一緒にすんな」

俺は普段大学の近くのアパートに、恋人(♂)の坂田銀時と同棲している。
年末くらいは毎年一人で実家に帰ることにしているのだが、今年は銀時も一緒に俺の実家で年明けを迎えることにした。

それはまぁ、一人で行くと話した時の銀時がまるで捨てられた子犬みてぇな目してた…から、なんだか悪ィ気がして、である。
一緒に過ごしたかったとか、親のいないこいつをひとりぼっちにしてやりたくなかったとか、そんなじゃねぇ。

俺と田舎に帰ることにした銀時は、俺と銀時の関係を俺の両親に打ち明けたいと言った。
後ろめたくって年も迎えられない、と。
その点には俺も賛成した。

……そして、実家へのこの足取りがとても重いのである。
お互いに緊張で少し口数も減っている。

住宅街の静かな通りには、銀時のひくキャリーケースの車輪の音、たまに上空を飛ぶ鳥の鳴き声が響いていた。

沈黙と緊張を破りたいらしく宙に目を游がせていた銀時が「あ」と声をもらす。

「晋ちゃん、椿」

銀時の目にとまったのは、垣根に植えられた赤い花らしい。
緑の葉の中に埋もれるように、木枯らしで花弁を落とされた花がいくつも咲いていた。

「ばぁか、ありゃ椿じゃねぇ」

「えっ」

「椿はあんなに葉が小さくねぇし、まず花弁は散らねぇ…花の根本からぼたりと落ちんだよ」

「高杉詳しいね…」

感心したように花を眺める銀時。

「じゃあ、あれ何?なんの花?」

「そりゃ……」

いつだったか、一人の師に教わった花言葉を思い出した。
タイミングよく目つけやがって。


「困難に打ち勝つ花、山茶花だよ」




山茶花


俺の親なんざ心配するこたぁねぇ、
性別なんて小さな壁を、ぶち壊しちまえ。




*****

山茶花の花言葉は
“困難に打ち勝つ”
“ひたむきさ”
“ひたむきな愛”
“愛嬌”

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