【33】

※下ネタ注意

(147)初の特別授業

「あー…見つかっちったか…」

銀八は苦笑いで頭を掻いた。

「銀八、これ…」

「ん。見た通りエロ本です」

「何で…」

「いや何でって言われてもな…お前くらいの友達なら持ってる奴いるぜ?」

晋助は信じられないというように本を眺めた。

自分はそこまで女の体に興味があるわけではないが、男ならこれくらい持ってて当然だろう。
しかも相手は銀八だし。

でも自分は男で、好きな相手がやっぱり女に興味があるという事実を突きつけられてショックだったというのもある。

「…何に使うんだよこんなモン」

「えっ…いや何って…ナニだろ…」

「?」

中二にもなれば純粋な晋助もませた友達にそっちの知識くらいすりこまれているだろうと思っていた銀八なのだが、晋助が本当に首を傾けているので銀八は焦った。

「いや……えっと……晋ちゃんさ、…自慰とか…知らない感じ?」

「?じー…?知らねぇ」

銀八は更に焦る。

「えぇぇ…じゃ子供ってどうやって出来るか知ってる?」

「は?それくらい受験勉強で習った、人間は胎生だとかそういうのだろ」

「えと、セックスは?」

「英語で性別って意味だろ」

「………ぅん…」

銀八は晋助がいかに純粋かを知って逆にショックを受けた。

「で、何だよそれ」

「教えていいものなのか?いやいつかわかる日が来ると思うんだけど…」

「いいから教えろよ。知らなきゃ恥ずかしいことじゃねーのか?」

「うーん……友達に聞いた方がいいんじゃねぇの?」

「!?あいつらが知ってるような事なのかよ…」

負けず嫌いなところがある晋助は、自分が知らずに他が知っているということに引け目を感じた。

「教えてくれねーのかよ…」

「えぇぇ……いやでも晋ちゃんさ…自分で調べるとか…」

そこでふと銀八のS心といたずら心が働いた。

「うん…、わかった。銀八センセーの保健の授業ね」

この子がどんなリアクションをするのか見てみたいと思ったのだ。
焦る顔が見たい、とか。

そして段ボールの中身を物色してそれらを晋助の前に広げる。

「…っ」

免疫がない晋助はそれらを見て真っ赤になる。

銀八はその姿に思わずにやけそうになりだが堪え、

「これ子作り、っつかセックス」

最中の男女のページを見せて躊躇いなくそういう。

「お前頭いいから、まぁ、仕組みわかるだろ」

無論わかるのだが、絵が絵だし内容が内容なだけに晋助は真っ赤になって目をそらした。

「……お前っ……」

そんな晋助が可愛くて、銀八はさらに楽しくなってきてしまい調子に乗った。

「で自慰…なんだけど、それは流石に写真とかねーな…」

「銀八っ、もういいから…」

「教えろって頼んできたの晋ちゃんじゃん…あ、ねぇ。」

銀八は晋助のズボンに手をかけた。

「…えっ、おいっ銀八…!?」

「やってみる?」


あまりの驚きに晋助は固まった。

「いっ、いい!断る!」

「まぁまぁ」

そんな晋助をいじるのを楽しんでいる銀八に全力で抵抗する晋助。

「っんの、ばか銀八っ!」

晋助が銀八の股間を思いっきり蹴り、勝敗は決まった。

「……っあ゛あ゛ああああ!!!!?」

その場で股間を押さえ悶絶する銀八を多少心配して、でも銀八が悪いんだと自分の中でケリをつけた晋助はまだ火照っている顔を隠すようにタオルケットをかぶりベッドを占拠した。

「ちょっ……晋ちゃん……今の、は………ひどくね……?」

銀八は痛みが収まるまで動けず、その間に晋助は寝てしまった。


〜〜〜〜〜


(148)ギクシャク

「ぅ…ん………」

目を覚ました晋助は、眠気に半ばおかされながら起き上がる。
自分はベッドの上で、その下に寝ている銀八の姿。

枕元の眼帯と読みかけの小説を見て思い出したのは、銀八が昨日の夜自分に見せた本のことだった。

「………っ…」

泣きたくなった。

自分が男だから。

晋助が、自分が同性愛者というこの社会においてアブノーマルな立場だと気づいたのはいつだっただろうか。
それでも銀八が好きだった。
ふとしたときに銀八の仕草にどきっとしたり、抱きしめてほしいとかまたキスがしたいだとか、そんな感情もあったのに。

「………銀八はやっぱり、女が好きだよな…」

今まで付き合ってきていたのも女だったし、昔は自分と風呂に入ってくれたし添い寝もしてくれて、二回キスもしてもらえたのは自分がまだ女々しい子供だったから。
今そういうことをしないのは、きっと中学生になり男らしくなってきた自分に萎えたから………?

そんな思考を悶々と繰り返して、何がなんだかわからなくなってきた。

とりあえず目の前で気持ち良さそうに寝ている銀八にイラついた。

「ふぎゅ!?」

銀八の顔面に晋助は思いっきり枕を叩きつけた。

最初の一発で目を覚ましたにも関わらず何度も叩く。

「ぶっ、ふごっ、ちょっ…晋助!?」

銀八が慌てて枕を掴み止めさせると、自分に馬乗りになって枕を叩きつけていた晋助の顔が見えた。

「…おはよー…ございます…晋助…」

「っるせぇぇぇ!」

「ほぶっ!」

晋助は一発銀八の腹に蹴りをかましたら廊下に走って出ていってしまった。

「おいっ晋助!?」

予想はしていたが、晋助は随分ご立腹だ。

晋助は空気よりは冷えていて心地よい廊下の隅にうずくまる。

「っっ…………」

恥ずかしい。
恥ずかしくて、どんな顔をして銀八を見ればいいのかわからない。

どこからか聞こえる蝉の声と羞恥心に押し潰されそうになって膝を抱えこむ。

「晋助」

銀八の声が降ってきて、顔をあげる気にもならなかった晋助は

「何」

ふてくされたように一言返す。

銀八は晋助の前に屈み、その頭をくしゃりと撫でた。

「メール来てたよ」

器用に晋助の膝の上に彼のスマホを滑らせてやると、晋助は無言で小さく頷く。

「っーあのーよ、晋助……」

銀八は苦い顔をして口を開いた。

「……悪かったよ。未遂の冗談とはいえ無理矢理……
「……万斉だ」

「え?」

晋助はメールを見てそう呟くと突然立ち上がり、だっと走って部屋に戻った。

謝罪しかけていた銀八はおいてけぼり。

「あのぅ…晋助クン?」

晋助はさっと着替えるとジーンズに財布と痛み止めの薬をつめてスマホを片手に

「万斉達と遊んでくる!」

と出ていってしまった。

状況についていけなかった銀八。

「あ、えっ、晋助…」

理解したのは、玄関がバタンと音をたて閉まってから数秒後。

「えぇぇぇぇぇ!?」

晋助のもとには、万斉から遊ばないかという誘いが来ていたのだ。

銀八と一緒にいるもいたたまれなかった晋助は都合がいいとばかりに飛んでいった。

「……帰ってくんのかなあいつ」

銀八はそんな不安を抱いた。


〜〜〜〜〜


(149)遊ぼうか

「晋助!来てくれたでござるか!」

「目の調子はいかがですか」

万斉のメールで指定された場所で指定された時間の十分前から待っていた晋助。

「遅い」

「いやしかし今は指定の時間の三分前でござるよ」

「俺が来たときが集合時間だろ」

「何ですかその傍若無人なルール」

彼等はそのままゲーセンへ向かった。

万斉が熱中している太鼓の○人に晋助と武市は30分ほど付き合わされた。

「もうそろそろ飽きないんですか」

「待って待って待つでござるあともう一回ブラックロッ○シュー
「俺あれやる!おい万斉行くぞ」

晋助が興味を持ったシューティングゲームでは初めてゲームをしたはずなのに晋助が最高の成績をおさめ周りのゲーマーに賞賛された。

武市がロリキャラのフィギュアをUFOキャッチャーで取ろうとしたら他二人はさっさと店から出ていってしまい、結局諦めたらしい。

「カラオケでも行くでござるか」

「あー、お前歌上手そう」

「高杉さんも十分上手そうですが」

「晋助の歌是非聞きたいでござる」

「おだてても何も出ねーぞ」

カラオケに行くとやはり万斉も晋助も歌が上手かった。(武市は歌わなかった)

「晋助晋助!ソウル○ータのエクスカ○バーの歌か、い○ご100%の○コウモリのキャラソンを歌ってほしいでござる」

「は?何だそれ」

「晋助の声に似てるでござる」

万斉が隠れオタクだったことも発覚した。

「俺ジャンプしか読まねーから知らない」

「ぬしはわかっておらんでござるな!いち○100%はれっきとしたジャン
「高杉さん次の曲始まりますよ」

「ああ」

「万斉さん飲み物頼みますか」

「………メロンソーダを…」

一曲歌い終わり、晋助は聞く機会をうかがっていた一つの質問を口にした。

「なぁ、あの、お前らよォ」

「はい?」

「何でござるか」

二人の返事が返ってくると晋助は口ごもる。

「あー…いや、大したことじゃねぇんだけど…よ……」

戸惑ったような顔をする晋助に二人は珍しげな顔をした。

「え、エロ本…とかって、…お前ら…持ってんのか?」

「「読みたいので(ござるか・すか)」」

「勘違いすんな!!違ェ!」

晋助は真っ赤になって否定する。

「ただ、その、ぎっ…銀八が皆持ってるって言ってたから…」

「読みたいでござるか」

「違うっつってんだろ万斉!ヘッドフォンぶっ壊すぞ」

「高杉さんはそういうの興味なさそうですもんね」

晋助は不機嫌そうな顔をして首肯した。

「女の裸とか、見たくないと言えば嘘になるかもしれねーけど大して興味ない」

「拙者もあまりがっつくほど好きというわけではないが興味がないわけでもないでござるからネット程度でござる」

「私もネットですかね。ロリが絡むものなら大体なんでも。あ、いや私ロリコンじゃありませんフェミニストですから」

「銀八殿はもう買える歳だからとりあえず買ってみているのではござらんか?」

晋助はやはりむっとしたままだ。

「お待たせしましたー、」

カラオケの女性店員が飲み物を持って入ってきたためその話題はそこで終了した。

自分は何が聞きたかったのか自分でも微妙に理解しなかった晋助はとりあえず自分の頼んだカフェラテをストローでぢゅうと吸い込んだ。


〜〜〜〜〜


(150)内緒だけど

「ただいま」

「!晋ちゃぁぁぁあん!」

「!?」

銀八の家に戻ってくると、奥から銀八が飛んできて晋助に強く抱きついてきた。

「おっおい、どうしたんだよ!?」

真っ赤になった晋助は慌てて銀八に声をかける。

「いや、失望されてもう晋ちゃん俺ん家じゃなくて家に帰っちゃったかなぁと思って……」

「失望?」

何のことだ、と晋助が眉を潜めると銀八は苦笑いした。

「いや……その…エ、エロ本持ってることに…」

「……別に構わねぇよ。自分で稼いだ金で買ってるんだろうし、お前だって男だ」

「……晋助」

「腹減った。飯にしようぜ」

「………ん」

「…おい、離せや」

抱きついてなかなか離れない銀八の肩をおしたがリアクションはない。

「…暑い」

「うん」

「離れろ」

「晋ちゃん」

「何」

「いつまでうちにいられるの?」

突然頼りなさそうに銀八がそう言うもので、晋助は動揺した。

「…えと、9月の頭が始業式だから」

「うん」

「8月の後半には帰る」

「…そっか」

そう答えると晋助を解放し銀八は立ち上がった。

「何なんだよ今のは」

「いや、何でもねぇよ」

「……変な奴…」

「今更かよ?」

一日、たった一日晋助が家にいなかった。
今まで当たり前だったはずの静けさが戻ってきて、大人げなく寂しかったのだ。

それで柄にもない質問をした。

「さて。腹減ったんだっけか。今日は麻婆豆腐だよっと」

銀八の意を知らない晋助は不思議そうな顔をしながら銀八に続き部屋に入った。



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