Forget me not(1)
お前と巡り会わなかったら、
こんなにも愛する人間など俺にはいなかったはずなのに
こんな俺じゃなかったのに
なぁ、俺は忘れないよ。
だから、お前も───
いつもの通り、俺はパチンコで得た金で甘味処へ行って、その帰り。
「あーさむさむ」
いつもの銀さんスタイルじゃなくてちゃんと両袖着物着てマフラーまでしてるのによー……
ぶらぶら街を歩いていると、今日のかぶき町にはやたらと黒服税金ドロボーが多いことに気づく。
………何だ…?
「あ、おいそこのあんぱん!」
制服で仲間と一緒に彷徨いてる山崎がいたんで、声をかけた。
「や、ま、ざ、きです!旦那!」
「名前なんてわかりゃいいんだよわかりゃ。何かあったの?」
「いや…別に……」
「真選組強化月間でさァ、旦那」
口ごもった山崎の代わりに、沖田クンがひょこっと現れて答えてくれた。
また強化月間だァ……?
「あんたらんとこのゴリラ大将も好きだね」
「姐さんにいいとこ見せたいんじゃねーですかィ?」
「あー……大変だねぇ大将の色恋だけで働かされる部下ってのも」
「全くでさァ」
「じゃ、頑張ってね沖田くん、ジミー」
「だから山崎ですよぉ〜!」
沖田くんの喋り方が胡散臭いし、山崎の様子もちっとおかしかった。
隠し事でもあるらしいな。
でもま、銀さんには関係ないし?
面倒だしもう家に帰ることにした。
「…沖田隊長、何でわざわざ旦那に嘘なんか…」
「馬鹿か山崎。旦那の正体はあの歴戦の攘夷志士白夜叉だぜ?奴と白夜叉は同期だろィ、もし知らせたら勝手に何するかわかんねーや…」
「……ですね…」
万事屋まで、ぶらぶらと晴れ渡った空を見上げながら歩いていた。
「…………?」
「待てェェェ!」
街角で一人、男が真選組に追いかけられていた。
まぁヅラかな、と思ってちらりと見たら。
違った。
いつもの着物じゃなくて、
渋い紫の着物に黒い羽織を纏った、
白い包帯が特徴的な、アイツ。
俺が記憶の奥底に無理矢理封じ込めていた、
アイツのの姿を見た途端。
俺の世界をあれほどに輝かせていたアイツの色は、何年も会わないうちにすっかり色褪せモノクロに変わっていたというのに。
またその色にこの一瞬で魅せられた。
色が、記憶が、戻った。
「………っ…!!」
無意識のうちに、俺の身体は動いていた。
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