サンタの赤は血の色でした(1)

クリスマスイヴは目前、
街はイルミネーションで彩られてスーパーやコンビニではケーキがやたらと出回り、街行く人たちは二人組が増えてきた頃。

「…………」

相も変わらず繁盛しない万事屋で、ジャンプを読む銀時を横目に神楽はテレビをつけた。

『そろそろクリスマスですが、こちらのケーキ屋さんでは──…』

ニュースでケーキの話題が出ると、神楽と銀時は目を光らせ食い入るようにテレビを見つめる。

「銀ちゃん、これうまそうアルな」

「馬鹿言え神楽、値段を見ろ値段を………こーんな高いケーキ一つ買うなら、安いケーキ腹一杯食った方がいいだろ?」

「安いケーキ腹一杯も買えないくせによく言うアルな」

「お前と定春の食費のせいだろーが!」

「ふんだ!銀ちゃんのケチ!私、サンタさんにこのケーキお願いするネ!」

「おい、ちょっと待て神楽サンタさんだって家庭があるんだよ!せいぜい肉まんがいっぱいいっぱいだよ!」

「ああーもううるさいですね!掃除に集中できません!テレビ消しますよ!」

「「あ」」

はたきを持って割烹着を来た新八に一喝され、テレビが消されてしまった。

ここのところ新八はやけに苛立っている。

ぶつぶつ言いながら掃除に戻る新八の背中を、二人は呆れたように眺めていた。

「……全くもう何なんですか、クリスマスなんて何であるんですか、クリスマスってあんなの子供のイベントでしょ、なのに何で大の大人がカップルで……」

どうやら。

「…チェリー新八は世のバカップルがクリスマスにこじつけてイチャコラするのが嫌みたいアルな」

「妬ましいんだろうらやましいんだろ。新八、そううだうだ言ったってモテないことにかわりはないんだからよ」

「余計なお世話だわ!」

銀時と神楽のひそひそ話に新八はまた一喝してから弁解を始める。

「僕が考えるにどうして無神論者がそういうイベントにだけ参加したがるのかとか、どうして大人が大人にプレゼントなんて渡すのか
「あーはいはいわーったわーった。あ、ごめんウソだわ、俺には高杉がいるからそういうのわかんないんだよね」

その弁解も銀時のノロケに中断された。

「銀ちゃんは姉御の道場でやるパーティー来ないアルか?」

「おうよ、俺はここであいつとパーリィすっから」

にやける銀時の前で神楽と新八は顔を見合わせる。

「でも晋ちゃん来れないんじゃないアルか?銀ちゃんと違って忙しそうヨ」

「そうですよ、ちゃんと聞いとかないと無駄な期待になるかもしれませんよ」

二人に言われ、確かにあいつはこんな行事をよくわかっていないかもしれないと銀時は思い、受話器を握った。


「あっもしもーし高杉?愛しの銀さんだよー」

『…用がねェなら斬るぞ』

「ちょっ、切るって電話だよね!?なんか一瞬斬るに聞こえたんだけど!」

『つか一体どうやって鬼兵隊の番号を……』

「まぁまぁ。ところでさ、24日空いてる?」


部屋で煙管を燻らせていた高杉は、そう言われて暦に目をやった。

「…あ、一月のにしちまってたの忘れてた」

『えっ気が早くない?』

「でも24日は確か仕事があったはずだぜ。どうやらその日は真選組やらも気を抜く日らしいからな、ちっと爆撃を」

『えええええ!?』

「24日って何かあんのか?」

『クリスマス!クリスマスだよ晋ちゃん!恋人達が寄り添って、性なる夜…じゃなくて聖なる夜を過ごす日!』

「くりすます……、真っ赤に染めた服着た爺さんが餓鬼の居る家に忍び込んで何かする日じゃなかったか?」

『んーとツッコミどころが多すぎて駄目だわ。もうちょっと優しい言い方をしようね』

「なるほど、真選組の奴等は赤い服着て忍び込むからお偉いさんの警護が手薄になるのか!」

『違ぁぁぁう!けどもういいや……。晋ちゃん、テロは別の日にしない?』

「断る。もう爆弾は手配済みだしな」

『やーだー晋ちゃぁぁあん俺のとこに来ようよ!テロなんか寒いよ?銀さんと一緒なら暖かいよ?』

「爆発の炎があるから平気だ」

『じゃあ人が死ぬのよりもっと気持ち良いこと
「じゃあな。」

ブツン、と高杉は電話を切った。

「…………」

「「…………」」

無造作に切られた電話を握りしめる銀時の肩を、新八と神楽はポンと慰めるように叩いてやった。

「しょうがないですよ、銀さん」

「やっぱりパーティー来るアル?」

「……クリスマスって何であるんだろうね?」

「…新八と同じこと言い出したアル……」


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