ヤキモチ妬きとポッキーゲーム(1)
「晋ちゃん晋ちゃん晋ちゃん!!今日は何の日でしょーかっ」
万事屋の引戸を開くなり、金時がでかい声で喚いた。
「朝からうるせぇ」
「つれないなぁ…」
俺は朝は低血圧で苦手なのだが、金時は夕方から朝にかけてが仕事なのでわりかし元気だ。
「で、今日は何の日??」
「まず今日は何日だよ」
「11月11日っスよ晋助様!」
金時に茶を出しながら来島が答えた。
「あ、ありがとねお嬢さん」
「アンタにお嬢さん呼ばわりされる覚えはないっスよ」
「そう言わないで、良かったら今度お友達でも連れて店においでよ。サービスするからさ」
指輪で飾られた指で来島の手をとって接客用の笑顔で微笑む。
「私は晋助様一筋っスから結構っス」
来島は相変わらず冷たい対応。
肩をすくめる金時がなんだかムカつく。
「来島を口説きに来ただけなら帰れ、そいつはうちの社員、迷惑だ」
そう言うと、
「晋ちゃんったら妬かないのー可愛いなぁ」
金時は嬉しそうに擦り寄ってくる。
「妬いてない」
鳩尾を肘でどつくと、腹を抑えて床にひれ伏せる。
俺が煙管を味わっている間に復活したらしく、しばらくして来島に声をかけた。
「お嬢さん、悪いんだけど少し席を外してくれる?」
ぷい、と来島はそっぽを向いた。
「私は晋助様以外の言うことは聞かないっスよ」
「また子殿、邪魔をするものではないでござる」
いつの間にかに奥から出てきた万斉が来島の肩を抱いて外へ連れ出そうとした。
「え、は、ちょっと万斉先パ──」
「では晋助、ホスト殿失礼するでござる」
来島は半ば無理矢理に連れ出され、
金時と万斉はお互いにひらひらと手を振っていた。
「さ、本題に戻ろっか晋ちゃん」
金時は俺に向き直るとにこりと笑った。
接客用の、ではない。
俺だけに向けられる優しくて少し妖しい笑顔。
「…いい小川の日…」
「何それ。」
「去年テレビでやってた」
「うーん、もっと有名なヤツ」
「知らねーよ」
俺がそう言うと、金時は大袈裟に指をならして声を高くした。
「正解はポッキーの日でしたぁー!」
「………ああ…」
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