本業は教師です、(1)

「……おい…」


「……おい、隠れてんじゃねーよ」



ストーカー野郎。



「……高杉って何でいつも俺が後ろにいるの見抜いちゃうの?」

「ばーか、お前がいると周りの奴等が俺と俺の後ろの方ちらちら見だすからわかんだよ」

「なんだぁてっきり愛の力かと思っちゃうじゃーん」


俺の担任であり恋人である銀八は、暇さえあれば俺のストーカーになる。

本人曰く追跡らしいが。

まぁ基本的に昼休みとか、あいつが授業ないときに俺がサボったときとか。

「キモいことぬかすんじゃねぇ、何が愛の力だ」

「俺の愛が大きすぎて?遠い晋ちゃんに伝わっちゃう、みたいな?」

「いっぺん死んだらどうだ?」

「あーごめんごめんそんな冷たい目で見ないで!」

屋上に行き、フェンスにもたれ掛かって煙草を取り出した。
最後の一本。

後で新しいの買ってこないと……

「はい」

煙草の新しい未開封の箱が、俺の前に。
しかもいつも俺が吸う銘柄。

「あ、悪ィな……っておい銀八何で俺が最後の一本なの知ってんだよ」

隣にいた銀八が楽しそうに俺に箱を押し付けてくる。

「いやいや、高杉って大体一日三本のペースじゃん?良くないよー。で、昨日の昼に見たとき残りがちょうど三本だったから今朝買ってきといた」

「…………」

そもそも教師が生徒に煙草やるってどうなんだ。

「違法だけど、まー俺も高校ん時から吸ってたし。
高杉煙草吸ってないと物にも人にも八つ当たりするし。
あれ、でもこの間沖田が呪いように奪ってた土方のジャージビリビリに引き裂いた時は珍しく買って返してたね。
あと俺個人的にお前の煙草吸ってるときの指と口元が好きなんだよな、なんかエロい」

お前はストーカーしてると人の心まで読めるようになんのか。
しかも何で土方のジャージの話知ってんだよ。
つか最後の理由個人的過ぎんだろ。

仕方なく銀八と隣り合って煙草を吸っていると、
突然銀八が俺の煙草を吸う手を掴み、キスをしてきた。

「…んっ………!?」

「俺次の時間授業だから行くね。ちなみに次の理科は源外のジジイ留守で自習だと思うから出たら?じゃあね可愛い可愛いしーんちゃんっ」

そう言い残したら、白衣を翻して銀八は戻っていった。



「……知るかよ」


まるで小さな嵐に追いかけられてるような気分だ。


だがその洞察力が鋭いのが恐ろしい。

下手に浮気もできないな。

まぁしないけど。

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