甘味とはろうぃん(1)

「とりっくーおあー」

「とりぃとぉぉぉぉぉ!」



「「…………は?」」


神無月の最後の日の事だった。



そう叫び現れたのは、菓子屋に出掛けていた銀時とヅラ。

宿に残っていた俺と辰馬は二人でのんべんだらりと碁を打ったり野良猫を可愛がったりしていた。

耳に慣れ親しんだ気だるい声とうざい声が聞こえて渋々振り向くと、
そこにいた奴等は何がしたいのか白い布を被っていた。

「おまんら、何しちゅうがか?」

辰馬が聞くと、布の下からくぐもった銀時の声がする。

「いやー、こんな感じの格好で“とりっくおあとりぃと”って言うと菓子が貰えるイベントがあるらしくてよ」

「天人共のイベントか?はっ、くだんね」

「まぁな。菓子屋にポスターが貼ってあったのだ」

ヅラが懐からピラ、とチラシをとり出す。

日本語しか勉強していない俺には何が書いてあるのかわからなかったが、隣にいた辰馬は読めたらしく、

「はろうぃん…?」

そう呟いていた。

「“とりっくおあとりぃと”って“菓子寄越さねーとてめぇの頭ぶち抜くぞ”って意味らしいぜ」

暑くなったのか邪魔になったのか布をはぎながら銀時が言う。

「菓子一つに命がけじゃねぇか」

俺の率直な感想だ。

「違う違う銀時、“菓子をくれないと悪戯するぞ”だ」

ヅラが銀時を制すると、辰馬が笑いながらすぐ近くにあった箱入りの莓大福の一つを銀時に渡した。

「なんかよぉわからんが菓子をやればいいんじゃの?ほれ、これをやるきに」

さっき俺が開けたやつ。

もしかして銀時のかもしれねぇとか思ったけど…

「ちょっ辰馬これ銀さんが大事にとっておいた莓大福様じゃねーか!!勝手に開けんじゃねぇよ!」

やっぱりこいつのだったのか。

「あ、悪ィ銀時それ開けたの俺」

「高杉お前甘いもん嫌いじゃなかったっけぇ!?」

「小腹が減ってよ。甘すぎてイマイチだった」

「人の食っといてそれかい!」

「銀時ばっかずるいぞ!俺にも菓子を寄越さんか!」

銀時の大福めがけてヅラが飛んできた。

「いや銀時ばっかってこれ銀さんのだもん!むしろあいつらがとりっくおあとりぃとしてるもん!」

「ヅラ、先にわしがとりっくおあとりぃと言うきに、じゃから買うてきた菓子ばわしにくれ。その後おまんがとりっくおあとりぃと言うたらそれをやるぜよ」

「妙案だな!」

「「結局一緒じゃねーか」」

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