最初で最後のプレゼント(1)

目の前も、
空も、

右も左も
上も下も何もかも

赤、赤、赤。


え、ちょっと待って。

俺──………







『ふぁー…だるィ…

…って、ん?…え、ちょっと待って

え、嘘だろ、嘘だろオイィィィィ!?』



耳に慣れ親しんだ声が、
どこか遠くで騒いでいる。

誰の声だっけ……



『いくら何でも早すぎんだろ、坂田銀時17歳!?17だぜ17!まだ童貞も卒業してねーじゃん!』

うっせぇ童貞どころが初チューもまだだよほっとけよ!

その声はだんだん俺に近づいてくる。

あ、こいつ涼宮ハ●ヒシリーズのキ●ンに声クリソツじゃねーか。


……いや、それ俺だよな。

ん、あれ?


聞こえてくるのは俺の声…

でも俺は喋ってない……



「えぇえぇぇぇえ!?」




俺は居たたまれなくて起き上がった。
そこで今まで横になってたことに気づいたんだけど。


『お、覚醒した』

周りは、ひたすらに真っ白で何もない空間だった。

唯一の影。

上から俺の声が降ってくる。


顔を上げると、そこにいたのは

『よ、お疲れ。今回は短かったな』

俺、だった。


銀色の天然パーマの髪、人よりは白めの肌、やる気がない紅い目は毎朝俺が鏡で見る俺だ。

いや、少しこいつの方が大人っぽいかもしれない。


ただ目の前のこいつは変な格好をしてる。

白くてでかい布を肩や腰やに何重にも巻いていて、背中には髪に負けないくらい輝く真っ白い羽根。
まるで俺の天使バージョン。

『まるで、っつーか天使バージョンだよ』

「は!?何で心読んでんの!?」

『お前の考えることくらい見透せるに決まってんだろ。俺天使だし』

「いや意味がわからない」

『お前さっき死んだじゃん。落下してきた鉄柱が天パ貫いて突き刺さる的な』

「それ以上歌うな!え、何爆弾的なの投げられて地球ごと終わったんじゃねーの?」

『お前だってカゲ●ロから離れられてねーじゃねぇか。』

いやにオタクな天使だ、と思いながらも俺は状況整理する。

俺は坂田銀時17歳、銀魂高校に通う青春真っ盛りな高校3年生。
好きなものはジャンプと甘い物とエロい話。
まぁこの辺りまでは至って普通だと思うんだよね。
別にホモって訳じゃなかったと思うんだけど、ただいま高杉晋助クンっていうめちゃくちゃ可愛い厨二病眼帯男子に片想い中。


『うん、可愛いもんな高杉』

「天使お前人の脳内に割り込まないでくれない?」

つか天使って何だよ、何でこいつ人の顔借りて天使なんかやってんの?

『借りてねェよ。だって俺とお前の魂一緒だもん』

「…ちょっと言ってる意味がわからないかな」

さっきから何言ってんのこの人(天使)。

つか俺さっき死んだって言ってなかった!?


『ああ死んださ。
今日10月8日の朝8時23分、お前は季節外れな台風の中、学校にいこうとして工事現場を通る。
いつも使ってる通学路は川が氾濫して通れなかったかな。
そこで、台風の影響でがたついていた鉄柱で形だけ造られた建物が崩れた。
で、真下にいたお前はその巻き添え。
一緒に学校に行こうとしていた高杉クンはお前に突き飛ばされてかすり傷程度で済んだって。良かったな


天使はたんたんと俺に話す。

ああ、確かに何となくそんな気がしてきた。

最期に赤い世界を見た気がする。

……俺、死んだんだな…

「お前は誰なんだ?」

天使はまだ聞くのかといったように顔をしかめる。

『一つの魂っていうのは、人間界に降りるときにこっちにその断片を置いていくんだよ、天国に戻ってこれなくなるから。魂を分裂させんの。
俺は、お前が置いていった魂の半分。
今の俺は前世から引き継いで銀八って名前だからよろしく。
俺とお前はこっちにきて一緒になっては分離して、交代交代で人間になってたんだよ。
前回俺は教師の坂田銀八になって、その前はお前が和製ホスト、そのまた前は俺が攘夷志士、その前はお前が万事屋……ってな具合にな。
お前が戻ってくるまで俺はこっちで天使として……あーもうめんどくさくなってきた、
…もう説明しなくていい?』

そのアバウトでめんどくさい感じ、俺と全く一緒だわ。

「いいよ、もうわかった」

多分俺はこれからこいつと合体して両方の記憶を持ち合わせた魂になるんだろ?

あーあ、まだ高杉に告白してないのに。

『………』

「何、何でそんなもの言いたげな顔してんの?」

天使の俺、銀八は物言いたげに俺を見る。

『…お前、未練タラタラだな』

「は?」

『高杉への未練。お陰で俺と合体できないの、ほら』

銀八が俺に手を伸ばしてくる。
その手に触れようとしても、お互いの手は透けて触れ合えない。

『人間界に未練があるとこうなって、成仏できねーんだよ。お前は高杉に未練があって死にきれない。わかるか?』

まぁ、わかるよ。

「だからってどうすりゃ…」

銀八はにやり、と笑った。

『これから2日、48時間だけあっちに戻れ。
あいつは霊感持ってるからお前の姿なんてすぐに見れるはずだ。
そこでケリつけてこれなかったらお前は俺と強制的に合体しちまうか、運が悪ければ地縛霊だからな。
急げ』

「確かにあいつ霊感持ってっけど……っ!!!」


ぎゅるん、と世界が回って。



何とも気持ちの悪い浮遊感に襲われた。


思わず目を閉じた。

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