銀世界(1)

「晋助様!雪っスよ!」

「これは降ってますねぇ」

「うむ、こんな夜は一曲…」

「いいっスけどちゃんと雰囲気にあう歌にするっスよ?」

「晋助殿もこちらに来てはどうですか?」


隊の奴等が騒いでやがる。

「騒がしい奴等だな…、今行くよ」

仕方なく座布団から腰を上げて、奴等がたむろう船の窓まで歩いた。

「晋助様、羽織を!」

来島が俺の肩に黒い羽織をかけてくる。

煙管を味わいながら空を仰いだ。

藍色にも近い黒から、ちらちらと白が降ってくる。

街の方にも積もった雪は、ぼんやりとネオンに照らされていた。

「ほぉ…こりゃあ…」

煙管の煙と共に声を漏らすと、俺を取り囲む三人が振り返り、微かに口元を綻ばせた。
前にもこんなことがあったな。

確か、攘夷戦争の俺達にとっちゃ序盤の頃。

あの時俺の隣にいたのは、こいつらでも、昔の鬼兵隊でもなく





銀時だった。





『…墨が足りねぇな…』


冬の寒い日に、俺は夜遅くまで武器の仕入れやらの書類を作っていた。

仕方なく冷たい暗い廊下に出て墨を取りに行くことにした。



廊下を歩いていると、前からひたひたと誰かの足音がする。


((…おかしいな、ほとんどの奴等は寝てるはずなのに…))


その足音が不意に止み、その代わりに聞き慣れた声がした。


『…た、高杉…?』


低く震えている声は、紛れもなく銀時のもの。

『銀時?こんな夜中に何してんだ?』

姿は暗くてよく見えねぇが、そいつに話しかけた。

『だぁぁ…高杉かよ驚かせやがって…』

『勝手にてめぇが驚いただけだろこのビビり』

『あぁ!?言ったなコラ低杉!』

『黙れビビり天パ』


奴は声と共に近づいてきて、銀髪と白い着流し、青っぽい羽織が見えてきた。


『つか高杉こんな遅くにどこ行くの?もしかして俺んとこに夜這
『斬られてぇのか』

懐の小太刀を見せると、奴は苦笑いで

『やだなぁ晋ちゃん照れ隠しにも程があるぜ』

なんてアホなことをぬかす。

『書き物してたら墨が足りなくなったんで、物置部屋に取りに行くだけだ。
銀時こそビビりのクセにこんな時間にどうしたんだよ?厠ならついて行ってやろうか?』

俺も奴を少しからかって言うと、

『バーカ、ビビってねぇって言ってんだろ』

一つ怒ったように言い、

『雪が降ってんだ。見に行こうと思ってよ。』


俺を見た。

まるで俺も誘うように。



『厠じゃねーけど、高杉も一緒に行こうぜ?』

…と思ったら誘われた。

『はぁ?雪なんてガキじゃあるめぇし…』

『雪ではしゃぐのはガキだけってか?はしゃいじゃいねぇよ、ちょっと見に行くだけだって。』

『っ、ちょ銀時!』

断る俺の手を引っ張って、奴は出口へ俺を連れていく。

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