女々しいくらいに強がりな(1)

歌舞伎町の夏は暑い。

高層ビルが立ち並ぶせいでナントカ現象って暑くなる現象が起こるんだって今朝方見たテレビで可愛いアナウンサーが丁寧に話をしていたのをぼんやり思い出しながら、立ち眩みすらしそうな人混みを歩く。

汗はダラダラかくし、黒いジャケットは日光の熱を吸い込んで俺の身体に負担をかけまくって、もう、ああ、暑い。

こんな汗だくで猫背になりながらフラフラ歩いている俺を、女の子達はちらりと振り返りながら歩いていく。

全く自分で言うのもアレだけど、顔がいいって得だよね。
香水つけてちょっといい服着れば、こんな炎天下でも水の滴るいい男、って奴?
まぁ絶対口に出したりしないけど。


今日何で俺みたいな夜行性がこんな時間に外をほっつき歩いてるかというと、
夏場でも着れる新しい浴衣が欲しかったから。

去年の夏は仕事ばっかだったせいで気がつかなかったが、今年は晋ちゃんという可愛い可愛い恋人がいる。

デートに行くときはやっぱりお堅いスーツはよろしくないじゃん?
(ジャケット開けっぱなしでブラウスも第三ボタンまで外してアクセサリーつけてるだけで晋ちゃんからはチャラいって言われるけど)

それで、俺に似合う浴衣を晋ちゃんに見繕ってもらおう!って話になり俺は今待ち合わせの場所へ向かっている。

しかも今回は晋ちゃんの方から「俺も行ってやる」って言ってくれたんだぜ、俺そろそろ死ぬのかも。

この暑い長い困難をクリアすれば愛しの晋ちゃんが…!

そう思えば何も辛くない、鼻歌混じりで登り坂を駆け抜けた。



待ち合わせ場所にいくと、晋ちゃんは気だるそうに煙管を吸って待っていた。

「ごめん晋ちゃんお待たせ!今日も可愛いね!女の子待たせるなんて俺最低だな踏んでください!」

「お前いつもに増して気持ち悪ィけど暑さで脳湧いたか?俺が女にすら見えるか?」

今日はいつもと違って中の黒いインナーは着ておらず、渦巻きの裾模様の入った着物を一枚着ていた。

「晋ちゃんのそれ涼しげでいいよね」

「?貸してやってもいいけどお前にはちと小さくねェか」

別に借りたくて言ったんじゃないんだけどね。
ちょくちょく天然発揮して可愛いなもう!



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