僕の居場所のある世界(2)
松陽先生ってあの松陽先生ですよね?
銀さんと桂さんと高杉さんに勉強を剣術を教えた…
「ちょ、新八?どうした?んな大声あげて」
「なっ、大声もあげますよ!松陽先生って亡くなってたんじゃなかったんですか!?」
僕がそういった直後、居間から溢れるほどの殺気がわいた。
「…てめェ…今、先生が死んだっていいやがったか…?あ?」
銀さんと桂さんを押し退け、その殺気を放っている正体が出てきた。
「たっ…高杉さんんん!?」
ゆら、と僕に刀を向けてきたのは、あの高杉さん。
だけど片目を覆う包帯はなく、緑色の目は両方健在なようだ。
「寄せ高杉。」
「んな無礼なガキは俺がたたっ斬る」
「新八くんは無礼ではないぞ、いい子だ!」
「先生も止めてくれよコイツ」
「晋助、よしなさい。」
「………チッ…」
三人に抑えられ、渋々刀を納める高杉さん。
「…それより、どうして高杉さん達がここに…?」
「どーしてもこーしても、遊びに来てくれたから思出話を肴に呑んでたとこだ」
「もう、こんな朝からお酒もほどほどにしてくださいよね。…じゃなくて!」
思わずそっちにツッコみそうになったら、銀さんがふと思い出したように口を開いた。
「そういえば街の様子が変だって言ってたな。何があった?」
「あ、えっと……」
何だろ、上手く説明できない。
「僕の、お通ちゃんグッズが一晩にして消えまして」
「「ぐっず?」」
僕の前の三人が首を捻った。
「……え…」
「新八くん、ぐっずとは何だ?」
「お通ちゃんの、って言うからにゃぁ瓦版か何かの事か?」
銀さんと桂さんはそんなことを聞いてくるし、高杉さんも無言だけれど眉をひそめている。
この三人も、グッズという言葉を理解していない。
何で、何でだ?
「あー…えっと、ところで神楽ちゃんは?定春と散歩ですか?」
「は?かぐら…?さだはる?」
銀さんはまた首をかしげた。
僕は血の気が引いた。
「…え?…銀さん、神楽ちゃんですよ…?」
「だから誰よ。どこん家の子?」
「……何言ってるんですか、今日の銀さんどうしちゃったんですか…」
目の前のこの人は、本当に銀さん?
「お前の方こそ今日どうしちまったんだよ?さっきからワケわかんねーことばっか」
「神楽ちゃんの事まで忘れたって言うんですか!?今まで万事屋でずっと一緒の仲間じゃないですか!!」
僕は思わず銀さんの胸ぐらをつかんでしまった。
銀さんは困ったように目線を游がせる。
「忘れたって、俺んな奴知らねーよ。お前と一緒に万事屋なんかやってねぇし…!」
え?
「俺はずっと一人営業だっつうの。確かにヅラや高杉には手伝ってもらうこともあるけどよ……
…お前はこの間俺のとこに依頼に来た客だろ?」
何、言ってるんですか…?
「松陽先生が死んだ、って言うけどよ?そもそも、なんでお前が高杉や先生の事を知ってんだ?」
だって、だって……
「高杉さんや桂さんは、銀さんと攘夷戦争を潜り抜けた戦友で、松陽先生は天人に殺されたんじゃ……」
「じょういせんそう?」
「俺達はんなモンに参加した覚えねぇぞ。」
「あまんと、って何だ?」
目眩がした。
ああ、わかったよ銀さん。
ここは、
天人が来ていない世界なんですね。
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