サンタの赤は血の色でした(2)

クリスマス当日、結局銀時は万事屋で一人酒を飲むことにした。


「んだよクリスマスなんてよぉ………所詮ただのキリストだか誰かの誕生日なんだろぉ……んなよく知らねぇ奴の誕生日を何でカップルが集ってお祝いすんだかねぇ……俺も十字架にはりつけられたら全世界が10月10日を祝ってくれんのかね…」

最早泥酔して自分でも何を言っているのかわかっていない。

炬燵を布団代わりに、銀時はごろんと横になった。


「あーあ……晋助ェ……」

一瞬酔いが覚めて、恋人の姿が脳裏に浮かんだ。


「会いてぇよ…………」



我ながら子供のようだ、とどこかで考えながら眠った。











『ピンポーン』


万事屋にチャイムが鳴り響いた。


『ピンポーン』



再び。


『ピンポンピンポーン』



「………ん…」

その音が微かに聞こえ、銀時は赤い目をうっすら開く。


『ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピ
「だあぁぁぁぁぁああ!!!!うっせぇぇぇ!」

そして銀時は眠りを妨げられた怒りで戸を蹴破った。

戸の前にいた相手は、倒れてきた戸を一瞬でかわし、逆に戸を蹴った相手の腹を勢いよく蹴り返す。

「ぶふぉ!?」

返り討ちにあって悶絶している相手に、


「……めりーくりすます」

蹴った本人──高杉は、そう呟いた。


「…え?」

意外だった、でも望んでいたその声に銀時はばっと顔をあげた。

ものの、

「……ちょっ…晋ちゃんどうしたのその格好…」

返り血を浴びて真っ赤に染まった羽織を見て驚く。


「部下がよォ、爆弾を仕掛けるとこを見られちまったって言うんで斬り込みに行ったんだ。」

苦笑する高杉。

いつもならここは不機嫌そうな仏頂面でいるところなのに、
笑っているのは久々に恋人に会えたからか。

「とりあえず寒ィ、入れろ」

「はいはい」

高杉の鼻や耳は冷えて赤くなっていて、銀時はそれが可愛くて思わず笑う。

炬燵のある部屋まで連れていくと、大量に転がる酒瓶を見て高杉は呆れたように眉をひそめた。

「これ全部てめぇで飲んだのか?」

「う、おぉ……」

「通りで酒臭いェと思った。寂しかったんだろ?」

にやり、と笑う高杉を見て銀時は苛立ったようにその頬をつねった。

「別に寂しくなんざねーや、ただ糖分不足でイライラしてただけだよ」

「ほぉ、ならこいつをやるよ」

そう差し出された風呂敷は、高杉がずっと持っていたものだ。

開けてみると、高そうなケーキの箱が入っていた。

「こいつぁ……この間テレビで特集やってた高級スイーツ店のケーキじゃねぇか…!!どうしててめぇが!?」

「万斉に貰ったけど俺甘ェもん嫌いだから」

「貰い物かよ!でもうまそー……」

銀時がそれに涎を垂らしている姿を少し嬉しそうに見た後、高杉はくるりと玄関へ歩こうとする。

「糖分不足だったんだろ?じゃあ俺はもう帰
「待って待ってごめんね晋ちゃん不足です寂しかったんです行かないでェェェ!」



高杉を炬燵の前に座らせて茶を出してやり、羽織を洗濯機にぶちこんでさらに布団を敷いてから銀時は高杉の隣に無理矢理座る。

「おい、せまいからどけや銀時」

「じゃあ布団にしよ。そうすりゃせまくないから」

「ヤる気満々じゃねーか」

「そうですークリスマスの恋人たちはこれがルールなんですー」

「間違った文化だろそれ」

言いつつも、仕方ないなと高杉は腰をあげた。

「メリークリスマス、晋ちゃん」















「やっぱりさ、クリスマスって理由つけなきゃ滅多に会えないカップルも居るってことでクリスマスはあってもいいと思うんだよね」


翌年のクリスマスまで、銀時は何かとこれを繰り返していた。




END

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