刺し違い(1)
「っ、キリがねぇな……」
うじゃうじゃと湧いて出る天人共。
生命力ゴキブリ並みじゃねーの、なんて思うほどしつこく攻撃してきやがる。
少し落ち着いて、気を抜いた瞬間、
俺の背中に何かがぶつかった。
「っ───!?」
敵かと思ったが。
「よぉ、もし俺が敵だったら死んでたぞおめぇ」
にぃ、と笑う高杉が居た。
「…高杉………」
「気ィ抜いてんじゃねーぞ銀時。」
背中合わせの俺達を、天人共が囲んできやがる。
「余計なお世話だバカヤロー」
俺は奴にそう返して地を蹴った。
返り血を浴びながら、いつもの様に白装束で戦場を走る。
仲間の死を、見て見ぬふりをしながら。
*
「余計なお世話、かよ……」
脳内でこだまする銀時の声を聞きながら、俺も敵を斬る。
仲間の屍を踏んでさえ、自分の命を護るために。
「!高杉っ、後ろ!!!」
不意に声がして振り向いた。
でけぇ天人が、俺に金棒を振り上げている。
俺は慌ててその心の臓に刀を深くつきたてた。
と、同時。
その巨体の奥から銀色の刃が突き出てきて。
それは、俺の腹を斬った。
「え」
天人が、同族に怪我をさせてさえも俺を?
違う。
どさりと土煙をたてながら巨体が崩れ落ちて、その先にいたのは。
「…ぎ、…ん…とき…?」
白装束の胸には、天人の身体を貫通した俺の刀が刺さっていて。
「たか…す、ぎ……」
俺達は
お互いに、
刀を刺した。
そう理解したのは、銀時がその場に倒れたときだった。
「っ、銀時っ……!!!」
駆け寄ったが、
奴の胸からは赤い液体が滴り落ちていく。
奴の髪には俺の血も落ちていき、輝く銀髪が濁った紅に染まる。
「っ嘘だろっ、…や、だ…ぎ……ん…と、き……」
銀時が。
銀時が。
俺のせいで。
俺もその時に意識がとんだ。
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
銀時。
許して。
*
高杉の腹が横に斬れて、
赤い血が吹き出して。
俺の刀が奴の血で赤く染まってる。
「…ぎ、…ん…とき…?」
高杉が、俺の名前を呼んだ。
奴の右手の刀の切っ先は、俺の胸のど真ん中に刺さってる。
ああ、俺は奴に刺されて。
奴は俺に刺されたのか。
「たか…す、ぎ……」
俺は高杉を、この手で──
ごめんな、高杉。
高杉…………
奴が駆け寄ってくるのが見えたが、視界が暗くなって何も見えなくなった。
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