笑顔(3)
「……なんでこんなことになったんだろーなぁ…」
俺は右手と歯を上手いこと使って、包帯で左の掌をキュッとしめる。
昨日の祭りの夜に、高杉の刀の刃を握った傷。
痛くて痛くて眠れやしなかった。
あいつのおかけで屋台の酒の味も綿菓子の味も覚えちゃいねぇ。
覚えてんのは源外のジジイの暴走と機械息子、
それと未だ隠されたままの左目に、奴の狂った声、刃の痛みに、
狂気に歪んだ笑顔。
高杉、
あんな歪な笑い方しかしなくなっちまって………
「ったく…、痛ェぞコノヤロー」
呟いてみるものの、何も救われやしなくて。
……いや、痛いのは傷なんぞよりも…………
俺の心の方かもしれねぇや。
あーあ。
あの柔けぇ笑顔がまた見れたらなぁ…。
ほんっと俺って欲張り、
だよな。
【もうあの綺麗な笑い顔が見れなくなると知っていれば、
俺はお前を放しはしなかったのに。】
そう、あの笑顔を手放したのはきっと俺。
END
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