あとの祭り(2)
そこに大好きな高杉の声が。
「高杉!」
「晋助!」
晋ちゃんったら寝癖つけちゃって、包帯も忘れてるし浴衣もだるだるで可愛い。
いや、その浴衣もこいつに脱がされたと思うと……
「俺の部下に何してんだ……離せ、銀時」
あーあ、俺が悪者なんだ。
「高杉昨日こいつに何された?」
俺は仕方なくグラサンを離して高杉に聞いた。
「は?別に何もされてねーけど……」
「え?だってこいつイったとか暴れたとか硬いとか……」
「白夜叉、ぬし一体何を勘違いしたでござるか?」
「銀時、てめぇ一体何を勘違いしやがったんだ?」
うわっ、言葉の中身全く一緒。イラッとくるな。
「万斉、こいつに何話したんだ?」
「いや、晋助が昨晩駄々をこねて祭りに行った話を」
………っえ?
「……え…」
「昨日の夜に江戸で祭りがあったのでござるよ。祭りに行きたいと駄々をこね、今日は大切な交渉があるというのに…あげくには刀まで持ち出して大暴れ、こちらも手を焼いたのでござる…」
「フン、ずっと前からよく行く祭りだったんだよ。神輿が派手で気に入ってんだ。」
「……祭り……?」
えっ、え?
「おう。銀時、昨年はお前と一緒に行っただろ?」
そういえば去年のこの頃、高杉に綿菓子やるから着いてこい、って言われて祭り行った(誘拐された?)気がする。
テロリストだってのも忘れて満喫してたら高杉が通報されて、慌てて逃げ出して……
「…あれか…!」
「ちっ…やっぱり忘れてやがったか…」
高杉がいやに不機嫌そうに舌打ちして、
「……俺は、…〜〜」
何かそのまま呟いたんだけど…聞き取れなかった。
「!?今お前なんて言ったの?」
「はぁ?何も言ってねーけど…」
ふいと視線をそらして教えてくれなかった。
その代わり隣で万斉くんがクスって笑った。
あの高杉くん、銀さんすげぇ気になるんですけど。
「つか着替えるからおめぇら外行け。」
そして高杉は恋人と部下を勢いよく部屋からつきだした。
「えーいいじゃねーか着替え見せてくれたってー、減るもんじゃねぇし!いつも裸見て…ぐへらっ痛い痛い晋ちゃん痛い」
高杉が俺の髪を抜けんじゃないのってくらい引っ張ってきた。
声あげたらすぐに離してくれたけど。
「出てけ腐れ天パ。」
ぴしゃりと桜の散る襖が閉められてしまった。
「あーあ……」
思い出したように万斉くんが俺に聞いてきた。
「で、白夜叉は一体拙者が晋助に何をしたと思ったのでござるか?」
げっ。
「えっと……その…バベルの塔の……あはは…」
「?」
万斉くんさっぱりわからんって顔してる。
わかれ、空気読め、っつーか単行本の九兵衛の見合いの話を読め!
「……まぁ良いでござる。何か勘違いさせるようなことを拙者が申したのでござろうな…。」
「うん。もう銀さん恥ずかしくて帰りたいわ」
「そのお返しに良いことを教えてやるでござる」
そいつはそう言うと俺の耳元に口を寄せた。
晋ちゃん以外の野郎がそんな近づいてきたって嬉しくないんだけど。
でも、俺は聞いた。
「………っ!!」
高杉がさっき呟いたことを。
『お前が祭りにいるかも知れねェと思ったから、部下の反対押し切って行ったのに……』
「晋助は本当にぬしが好きなんでござるな」
「晋ちゃん!!ごめんね、今日これからどっか行こう!!」
俺は部屋に飛び込んで着物を羽織ったままの状態の高杉に抱きついた。
「っはぁ!?ってか部屋入ってくるんじゃねぇ変態!」
「何を言っているでござるか、今日は晋助には予定が……」
「万斉も!入ってくんな!」
「予定なんかいいじゃん硬ェこと言うなや」
「ぬしまで…!今日の交渉は新たな武器の話だから必要…」
「テロはひとまず休んで銀さんと、ねっ晋ちゃん!」
「白夜叉、ぬしはもう国や刀を捨てたのだから拙者らのやることに口は……」
「うるせぇよ、そんなもんより高杉の硝子ハートの方が俺には大事なんだよ!」
「…てめェら……」
「晋助の恋人といえど、拙者らの企てを邪魔する者は許さんでござる。」
「…ぉい……」
「邪魔なんかしてねーよ!むしろ?高杉の心も体もケアしてやってんのは俺だっつーの」
「…俺の話………」
「そんなもの必要ないでござろう」
「必要だよ、俺にとっても高杉にしても。っつか今まで言わなかったけど一緒にいる時間てめーの方が多いのにケアできてね
「いい加減にしろてめェら!!!!」
俺の腕の中でいつの間にかに着物を着た高杉の怒鳴り声で俺達の言い合いは静まった。
「もう知るか!交渉には来島連れてく!おい来島ァ!」
「お呼びっスか晋助様ァァ!」
「待つでござる拙者も─……」
結局、今日はグラサンとシミパン女と一緒に高杉は交渉に出ていっちまった。
俺に一言、残して。
「今夜こそは俺に付き合ってもらうからな……」
真っ赤な顔して。
ほんっともう。
「かわいーやつ……。」
さぁて、可愛いあの子に酒でも買ってきますかね。
END
銀ちゃんがただの変態、
晋助と万斉がただのアホ、
また子がただのモブなアホ話でした。
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