最初で最後のプレゼント(2)

次に気がついたときにいたのは、大好きなあいつの隣だった。

きっと俺の家の近くの病院だ、何度か見たことのある白いベットにぽつんと高杉は腰かけていた。
放心したように虚空を眺めて。

時計を見ると、もう22時。

あれ、俺死んだの朝じゃなかったっけ!?

そう思っていると俺の胸の奥の方にテレパシーのようなものが届いた。

“悪い、そこに送んのに思ったより時間かかった。でもお前がそっちにいられんのが明後日の8時23分ってのにはかわんないから”

無論あっちの俺の声。

『はぁぁ!?お前何してくれてんだよふざけんな腐れ天使!』

“残念でした〜お前はその腐れ天使の分身ですぅ〜”

俺が思わず銀八に叫んだのに気づいて、高杉が勢いよく俺に振り向いた。


「ぎっ、銀時!?」


や……やっべェェェ!!!!

いや待てヤバくないヤバくない!俺はこのために来たんだ!

ヤバくないけどもヤバい!!

“ヤバいのはお前の頭だろうっせーな”

うるせェェェ!

「お前、今朝死んじまって、俺の目の前で…あ、そっか霊に……ホントに死んじまったんだな銀時っ…」

高杉は喜びきれず悲しみきれず何とも言えない表情で、片方しかない目から涙をこぼした。

『……高杉…』

俺にすがるかのように頭を項垂れて、撫でてやりたいけど俺の手では触れられなかった。

「何で、俺じゃなくてお前が死ななきゃならなかったんだよぉ……」

いつもの大人びた風体はどこへいったのやら、子供のようにぐすぐすと泣き出す。

『泣くなよ高杉…俺、後悔してないし。高杉が生きててホント良かった…』

触れないけど高杉の背中に寄っ掛かるようにそっと寄り添った。

俺は確かに死んだけど、
こいつが生きてて良かった。

心からそう思った。


高杉は泣いて泣いて、泣きつかれて眠った。


“どうだ、言えそうか?”

『……わっかんね』

銀八の声に何とも言えない返事を返す。

とりあえず高杉が俺の事を随分大切に思っていてくれたことがわかって、
しかもあんな泣き顔なんか見れちゃったからもう満足かも。

“バカ、お前がちゃんと満足したら自動的にこっちに来れるようになってんの”

満足はまだ、ってことは……

……告白、ね。



次の日は、高杉とずっと一緒にいた。

喧嘩で怪我に慣れてる高杉(慣れちゃダメだろ)は次の日当然のように学校へ行けた。

俺が見えない回りの奴は、「坂田が死んで落ち込んで来ないと思ってた」って皆言う。

高杉は首を傾げて「銀時ならここにいる」って俺を指差してくる。
皆ビビってるよ、その辺にしてあげな天然霊感少年。

でも皆俺がいなくなって元気をなくしてた。
不謹慎だけど嬉しかったり。

でもふと思う。

ほんの数日前まで皆と一緒に喋って、ゲームして、漫画回し読みして、ふざけあってたのに。

奴等には俺がうつらないんだと知るとすごく寂しくて虚しくて。

「……銀時?」

俺がよっぽど寂しそうに見えたのか、授業中に俺を見上げてきた。

『大丈夫、何でもな──』
「俺は、ちゃんとお前の事見えてるからな!お前は生きてないけどここにいるって、わかってるから!」

俺の目を見つめて、小声ながらも必死に訴えてきた。

霊感あると俺の心まで読めるの?

“違うだろ。今まで沢山の霊を相手にして来たんだ、霊が友達を見て何を思うかなんて知ってんだろ”

成る程。

『高杉は優しいな。元気出たよ』

俺がそう言うと、高杉は嬉しそうにはにかんだ。







「…銀時、いつまでここにいれるんだ…?お前はこの世にどんな未練があるんだ?」

本当にあいつは霊の世界の事を知り尽くしてるようで、昼休み屋上で菓子パンを食べながら俺に聞いてきた。

『…明日の朝まで。』

高杉は悲しげに顔を歪めた。

「……そ、か…」

『それまでには俺もケリつけるよ。心配かけてごめんな高杉』

そう言って笑って見せると、力なく高杉も笑った。
目は笑ってなかったけど。

その後も俺は高杉に付きまとってたけど、何も言えなかった。

家に帰ってシャワーを浴びて、コンビニ弁当を食べた高杉は疲れていたのかすぐに寝てしまった。

“霊が近くにいると生気吸われっから疲れんだよ”

『そーなの?悪いことしちまったな』

“つかお前今日一日何もしてねーじゃねェかバカヤロー、期限は明日の8時までなんだぞ”

『うるせェよ、んなことわかってらァ』

高杉が起きるのは、いつも朝の7時位。
タイムリミットは残り1時間27分、といったところだ。

俺は、お前にこの気持ちを伝えられるかな。
フラれたらどうしよう…って結局死んでんだしどうしようもないか。

“その意気だ、当たって砕けろ”

『嫌だね』

でも、しょうがない。
あいつが目を覚ましたらすぐに言おう。








「…おはよ、銀時…」

『おはよ。』

目を覚ますとぼんやりしたまま高杉は制服に着替え出す。
顔を洗って歯を磨き眼帯をすると、朝飯も食わずに外へ出た。

『高杉、朝飯はいいの?』
「いい。銀時」

俺が死んだ事故現場まで高杉は歩いていく。

毒々しい血痕がそこにはあり、人は一人も通っていなかった。

その血が俺のものだと思うとゾッとした。


「お前が成仏出来るように協力してやるよ。お前は何の未練があるんだ?」

俺を見て高杉は声を低くし訊ねる。

『……高杉』

今、言わないでいつ言う?

『……あのな、俺、




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