女々しいくらいに強がりな(2)

一つ店に入ってなんとなく棚を物色してみる。

「やっぱ黒いいよなぁ。でも暑いかも…、やっぱ夏なら青とか?でも俺青と相性悪ィしなー」

「紫とかどうだ?」

「紫は晋ちゃんの方が似合うでしょ」

ふん、と少し嬉しそうに鼻で笑う晋ちゃん。
この子紫好きなんだ。

確かに寝巻きも赤紫だったし。

……良いこと考えた。

「あ!晋ちゃんにも浴衣買ってあげる!紫の!」

「はぁ?」

「ほらこれとかいいんじゃん?あ、あとあそこのやつも!」

「お、おい?金時?」

自分に似合うものよりも恋人に似合うものの方が見つけやすいって俺はアレか、忠犬タイプか。

晋ちゃんは呆れた顔をして俺が指差す方を眺める。

「センスはいいと思うが、ありゃ女物だろォが」

「晋ちゃんなら着れるよ!背低いしヤるときも女側だしっぐっf」

晋ちゃんに思いっきり腹に蹴りを入れられ言葉を中断された。
でも着物一枚に草履だったから晋ちゃんの生足が拝めた。良しとしよう。

黒と紫が主軸で蝶や花の裾模様の浴衣が気になるのかチラチラと見ている彼。

「あれが欲しい?」

「お前は自分の主旨を忘れたのかよ」

「晋ちゃんに喜んでもらうのが俺の優先事項」

にこ、と笑って見せると何とも言えない表情で俺を見てきた。

「あとはどれがいい?」

「?一着でいいけど」

「もっと買いなよ!」

「てめェの服を買えっての!」

呆れた奴、と呟いてから晋ちゃんは男性用の浴衣のコーナーに向き直る。

「そういえばお前今夜は仕事なのか?」

いつもよりも真面目な表情で着物を物色していたが、突然思いついたように聞いてきた。

「え?いやいや、今日は休みとってる」

「そうか」

会話終了。

何となく会話がないのもな、と思い冗談まじりに声をかけた。

「今夜はどうしよう?ホテルでも行っちゃう?」

「…………」

無言で俺を見つめる晋ちゃん。
あらやだ怖い。

「なっなーんて。ご、ごめん晋ちゃん冗談だ
「ホテル、行くか?」

「………え…?」

ほらまた真顔。

「え、ま、まじ?」

「嫌なら夕飯食って帰れ」

「行く行く!」

珍しい。というか初めて。
晋ちゃんがホテルとか嫌な顔一つしないなんて。

何となく嫌な予感がしなくもないけど、とりあえずまた可愛い晋ちゃんの喘ぎ声聞けるならまぁいっか。
晋ちゃんも溜まってた、ってことで。


「これァどうだ」

俺がぼんやりしていると、彼は浴衣を俺に差し出してきた。
濃紺に赤と紫の裾模様が散った浴衣。

「おー晋ちゃんセンスいい!」

「あとこの辺か」

金の刺繍の浴衣に鈍い赤のもの、ひょいひょいと晋ちゃんは選び出していく。

お互いに派手好きでセンスが合うため、どれもこれも男が着るには多少派手だが俺としてはなかなか悪くないと思う。

「じゃあこれ全部レジ持ってくから、晋ちゃんもちょっと持ってもらっていい?」

「お前なぁ、金はもっと計画的に使うもんだぜ…」

「歌舞伎町一のホストはこんなとこで出し惜しみしないってことさ」

溜め息をつく彼を見て見ぬふりして会計を済ました。

「夕飯は?何食べたい?」

職業柄というか、晋ちゃんのためというか、美味しいお店は多少把握してあるからいつも彼が食べたいものを考慮して連れていくのだが。

「……お前この間パスタ作ってくれたよな」

「うん?ああ、そういや作った」

「アレ食いたい」

思わぬご指名が入ってびっくりした。

確かに以前食べさせたときには「悪くない」って言ってくれたし。(基本的に料理に辛口かつツンデレな晋ちゃんが俺の作った料理にそんな評価をつけるのは彼の最大限のデレ)

何か今日の晋ちゃんはいやに素直。
これはホテルじゃなくて俺の家でじっくり可愛がりながら話を聞く必要があるかも。

「じゃあ作ってあげる。このままうちに行こっか」




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