寂しがり屋は静かに嘆く(5)

目が覚めると、それはまさに一ヶ月ぶりの誰かが隣にいる目覚めだった。

銀八が俺を抱きしめたまま眠っていた。

身体には特有のだるさと鈍い腰の痛みが残って、それすらが愛しい。

起き上がろうとすると銀八の手にグッと力がこもり、動けなかった。

「……起きてたのかよ」

「起きてません。反射神経です」

「嘘つけバーカ」

「本当だよ」

銀八は目を閉じたままなんとも言えない顔で笑った。

「だって、俺は無意識にお前を欲してるんだもん」

どうしていいのかわからなくなった。

そりゃ嬉しいけど、だって。
昨日の夜…いや、今朝の?出来事だって、今は一夜の間違いであって。

『俺もお前がいなきゃ駄目なんだよ』
って、恥ずかしがらずにすらりと言えれば楽なのか、いや今それは違うか。

「…悪ィな、困らせて」

俺の表情を見たのかそう言い苦笑いする銀八。

「銀八、心中してェな」

俺が思わず呟いたその言葉を聞き、銀八は起き上がって切ない顔をした。

「いいけどよォ、お前まだ18歳だろ?」

「だからどうした」

「若い晋ちゃんにはまだまだ楽しいこととか沢山味わってほしいわけ。」

「お前と一緒にいられるわけでもねェのに楽しいことなんてな…」

「あるよ。俺となんかの事くらい忘れちゃうような楽しいこと」

「忘れるかよ!」

睨み付けると銀八はしばし口を閉じた。

忘れられる程度の軽い思いじゃないんだよ。

切り替えて他の誰かを好きになれる程度じゃないんだよ。


こんなにも惚れてるんだよ、銀八。


自分が非力で哀れにすら見えてくる。



なぁ神様とやら、
どうして報われないなら俺にこんなに人を愛することを教えたんだ?



「6月に、結婚式」


「そっか。俺も呼んでね」


「ああ」


「しっかりしろよ、もう旦那になるんだから」


「………ああ…」


「腹減ったな。なんか食うか?」


「…昨日もらったアレ食う」

このまま進んで、幸せになるのか。
誰かが幸せになれるのか。


『もういくら嘆いたって道は一つしかないんだから、
このまま進むしかないことくらいわかっているさ。』




静かに自分にそう言い聞かせて、
涙の味が混ざった甘い菓子を一つ頬張った。








END




ぐだぐだしてるし相変わらず報われなくてごめんなさい

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