寂しがり屋は静かに嘆く(2)

「あれ!?兄貴にサドに高杉アル!」

ファミレスに寄ると、そこには神威の妹とその友達の志村弟、それに──…

「これこれこんな時間に寄り道しないの」

その真ん中に珍しくスーツ姿の銀八。

「神楽、先生と来てたのー?いいなぁ先生俺にも奢ってよ」

「バーカ神楽にも奢るつもりねぇよ。そもそもてめぇらの分払ったら破綻するわ」

たかってくる神威を鬱陶しそうにはらいながらその間にも自分はパフェを口に運ぶ。

「じゃ何でこんなとこにいるんでィ」

「最初に先生一人がいて、僕と神楽ちゃんでここに来たとき混んでたんで相席させてもらったんです」

沖田は不服そうな顔をした。
そりゃ自分の彼女が自分以外の男と二人でファミレスに来たんだから当たり前か。
心なしか志村の顔も青い。
この後どうなるか見物だな。

「あ、おねーさんおねーさん、これとこれとこれのセットと──」

勝手に隣の席に座り注文しだす神威の前に座り、銀八をちらりと見やった。

「「あ」」

銀八と目があった。
に、と奴は笑ってからまたパフェに取りかかる。

顔が熱くて胸の奥がじゅくじゅく痛んだ。




すっかり暗くなってしまい、店の外に出たらザアザアとバケツを引っくり返したみたいな雨が降っていた。

「うわー雨降ってきちゃった」

「急いで帰んねーと風邪ひいちまいまさァ」

「兄貴ぃ私傘もってないアル」

「あはは俺も」

「使えないアルな!」

「げっ」

奴等の会話を流し聞きしながら携帯で帰る電車を調べていたところ、俺の利用する電車は事故だか点検だかで止まってしまっていた。
ちなみにこの中で電車通学は俺だけで、神楽、神威、志村は歩き、沖田はバス、銀八はバイク。

「どうかしましたか高杉さん?」

「あ……いや、電車が止まっちまった」

「先生、高杉送ってやってくだせェよ」

「あ?高杉どうかしたか」

沖田の声で銀八が振り向いて俺を見た。

「電車止まっちゃったらしいネ」

今までなら銀八は鼻息を荒くして「よーしわかった今夜は先生の家にお泊まり学習決定な!科目は勿論保健体育!」とか言って飛び上がってた奴だが、
「俺今日バイクじゃねーんだよ…誰か泊めてやれねーの?」
視線を泳がせ困ったように言った。

バイクじゃないときにこいつが使う電車は通常運行なんだが。

「「「高杉(さん)とはいえ、うちには女の子がいるから避けたい(な・んですが)」」」

確かに志村には狂暴な姉が、神威にはこの妹の神楽が、沖田には病弱な姉がいる。

三人の反対をもろに食らい、銀八は溜め息をついて俺の頭をくしゃりと撫でた。

「しゃーねーな。じゃ高杉、お前俺ん家に来い」

その誘いは嫌らしさなどはらんでいないもので、寂しいような嬉しいようななんとも複雑な気分になった。


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