「合格おめでとー!」

ガチャリ、と鍵の音が聞こえたのであたしは玄関で待機して、赤司が入ってきた瞬間にそう言った。寒かったのか鼻を赤くしている赤司はいつもより子供っぽく見えて少しだけ笑ってしまった。

「…まだ何も言ってないし、なんで笑ってんの」
「く、ははっ、ごめん。だって、赤司が落ちるわけないし」

ため息をついた赤司は靴を脱いであたしの腕をぐいっと引っ張ってリビングに向かった。いつからいたの、と呟いた赤司は冷えたあたしの足や手先を心配してくれているのだろうか。あたしより赤司の方が手は冷たいのに、ばかだなぁ。

「名前は、受かったのか?」
「もちろん。ばっちしだよ」
「…落ちれば良かったのに」
「ひどっ」

赤司がそう言うのも分からなくはないけど、ね。まあ、要は、あたしが赤司に内緒で大学を決めたのだ。赤司は進路選択のときは決まって情緒不安定になるので(中学のときもそうだった)、ちょっとしたことでケンカしてしまって、それからつい一週間くらい前まで口を聞いていなかったのだ。あたしが赤司に内緒で大学を決めたのは、別に赤司に対する腹いせとかではなくて、やりたいことがあったから。赤司には自分にあった進路を選んでほしかったから、口聞いてなくて正解だったけど。

「赤司は受かってたんでしょ?当たり前だけど」
「当然だ。今更何を」
「T大受験するのが赤司にとって当たり前で必死こいて勉強してないのが若干むかつく」
「むかついてるのは俺の方だ」
「…まだむしかえしますか」
「ずっと言ってやるよ。許したわけじゃないし」

赤司は大学も同じところを受験すると思っていたらしい。でも馬鹿(少なくとも赤司よりは)なあたしはT大受かるわけないし、かと言ってあたしが受験する大学に赤司が入るなんて無理だし。

「今までずっと一緒だったから離れるなんて想像できないな」
「地方行くわけじゃないし大ゲサ」
「俺にとってはそのくらいの衝撃だったんだよ」

もちろんあたしだって少なからず悪いなぁと思ってる。でも事前に相談したら赤司絶対あたしに内緒で一緒の大学希望するだろうし。これが一番最適だったのだ。

「ごめんって」
「………」
「今日から一緒にここに住むんだし、初めからケンカなんてやだよあたし」
「…ケンカじゃない」

あーあ、負腐れちゃって。案外子供ですね、赤司征十郎くんは。拗ねたような横顔がとても愛しくて、口が緩んだ。一緒の大学ではないけれど、今日から一緒に暮らすなんて。あたしの名字が赤司に変わる日も近いのかも!なんてね。

「征十郎くんは本当にあたしが大好きなんだねー」
「…だから何」
「あ、照れない照れない。かわいいなぁーもう」

うるさい、と言ってそっぽを向く赤司が本当に可愛くて大好きで、抱きついた。なんだかんだ言いながらあたしを心配してくれたり、色々許してくれちゃう赤司は結局あたしにベタ惚れで、あたしも赤司にベタ惚れなのだ。その証拠にさ、ほら。

抱きしめ返してくれるじゃん?



∴ふたりであるいていこうね



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赤司くん大好きなんですけど短編って初めて書きました

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