私が黄瀬くんを初めて知った場所はコンビニの雑誌コーナーです。友人との待ち合わせ前にたまたま寄ったコンビニで、たまたま取った雑誌に黄瀬くんがいました。その眩しい金色に、私はずっと目を奪われていました。同い年でこんな人いるんだ、とすごく驚きました。ただ驚いただけじゃなくて、私は黄瀬くんに一目惚れしていたのです。
黄瀬くんはバスケをしているそうなので、インターハイは見に行きました。バスケがどういうものか私は分からなかったので、大会に行くのはとても緊張しました。でも、会場の熱気とかコートの中を駆ける黄瀬くんを見ていると、わくわくしました。当たり前だけど勝ってほしいと強く思ったし、初めて自分の目で本物の黄瀬くんを見たので、気持ちも高ぶっていました。結果は残念だったけれど、素人の私から見てもすごく黄瀬くんは、海常高校の皆さんは頑張っていました。きっと私なんかには分からない努力があったんだろうなぁ。

私は黄瀬くんと同じ高校ではなかったし、話す機会もありませんでした。もしかしたらその機会はあったのかもしれないけれど、私は自分から避けていました。私は美人でも可愛くもなくて、唯一の趣味兼特技は絵を描くことでした。黄瀬くんにしたら私なんてそこら辺にいる地味な女なのです。変わりたいと思いました。でも、黄瀬くんはある種の芸能人です。私が抱いている「好き」という気持ちは、アイドルを好きみたいな、そういう気持ちなのかもしれません。私の思考は永遠無限ループをさ迷っていました。だってこんなこと、誰かに相談するのも恥ずかしいし。でも私は知らなかったのです。恋は一人でするものじゃないと。でもね、仕方ないと思うんです。だって私は、これが初恋なんですから(初恋にしては、ハードル高かったなぁ)。

季節は巡り巡って初冬。肌寒い東京の冬です。私は地方から来たので、東京の寒さはへっちゃらですが、夏は暑かったです。この頃の私は決めていました。バレンタインになったら、黄瀬くんに告白すると。黄瀬くんにしたら私なんて、ギャラリーの一部だけど、ギャラリーの一部だからこそ、それに乗っかって告白します。いつまでもうじうじしていられないし、いつか勇気を出さなくてはならなかったら。私は、前に進めただけでしたが、それでもとても自分が変われた気分でした。もしかしたら、うまくいくかもしれない。お友達くらいにはなれるかもしれない。








でも、そんなことは結局幻想にすぎなかったのです。
ついさっき、黄瀬くんを見かけました。こんな風に平日に会えるなんてラッキーだ!と思っていたら、彼は女の子と手を繋いでいました。所謂恋人つなぎというやつです。その瞬間、頭にどずんと、すごく重い衝撃が与えられました。私は恋をしたことはありませんが、普通の友達とは恋人つなぎなんてしないということは分かっていました。いまだ頭が痛い私がわかったことといえば、彼には恋人がいるということ。そして彼はその恋人をとても大切にしているということ。私が入る隙はないということです。



辛い辛い辛いつらい。その一言に限ります。スタートラインにすら立っていなかった私の恋ですが、あまりにも大きくなった恋心は私を壊すのには十分でした。涙で前がよく見えません。だから、私がこれからどこに行けばいいか分かりません。涙で字が霞んで見えます。それにきっと、堪えきれなくなった涙がペンのインクをぼかしているのでしょう。
つらいので、この日記とはしばらくさよならします。私が今より大人になって、今の気持ちを懐かしめるようになるまで、とっておきます。その頃には私は恋人が出来ているのでしょうか。そうだったら嬉しいです(今は悲しいけどね)。
それじゃあ、さようなら。



追伸




∴ask for the moon
(ないものねだり・不可能なことを望む)

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