遠くの方で悲鳴が聞こえた。あの甲高い声は隣のクラスの女子のものだから、体育祭優勝したのは私のクラスじゃないみたいだ。私は玄関の近くにしゃがみ込んで、向こうの賑やかなグラウンドを見つめていた。 小さい頃から重めな喘息持ちだった私は体育、というか、激しい運動ができない。普段から気をつけていても体を壊してしまう私は体育祭や球技大会などはいつも見学コースだ。それは別に慣れてしまったから何とも思わないけど、ふとしたときの、寂しさみたいなものは未だに慣れない。クラスの団結を高める団体行事は、私にとって孤独な行事以外何物でもなかった。 「あれ、名字」 俯いてちょっぴりセンチメンタルになっていたら、宮地くんが声を掛けてくれた。閉会式は、と聞くととっくに終わった、と返されてしまって苦笑した。 「あ、優勝宮地くんのクラスだよね。おめでとう」 「おー」 宮地くんとは二年生の時に同じクラスで隣の席になって、主に私が迷惑をかけて(倒れたときとか)お世話になった同級生だ。学校指定のジャージを腕捲りして暑そうに手で仰ぐ宮地くんはとてもかっこいい。あ、好きとかじゃなくて、鑑賞用のイケメンみたいな。 「はい」 「うお、」 「冷たいでしょ、さっきそこの水道で冷やしてたんだ」 宮地くんの耳の下辺りに私の手をくっつけた。宮地くんは一瞬驚いた顔をしたけどすぐに私を離してそっぽを向いた。自分でやるから、と言ってすぐそこの水道に向かった宮地くんの耳は赤くなっていた。照れ屋さんだなぁ。 「名字一人でいたのかよ」 「まあ大体はここにいたかな」 宮地くんは蛇口を捻って頭から水を被った。蜂蜜色の綺麗な髪の毛が水に濡れていく様を見て、今度は綺麗だな、と思った。綺麗なんて、男の子に失礼かな。 「マジかよ。寂しいだろ」 私はこんな体だから友達も出来にくいし、特に男の子は意図的に避けていたのだけど、宮地くんを避けることができなかったのはこういう、私がつい飲み込んでしまう寂しさを簡単に引っ張り出してしまうところだ。親にも弱音吐いたことないのに、宮地くんにはすんなり吐けてしまったよなぁ。 「宮地くんはエスパーだね」 「は?」 「ちょうどさっき、寂しいなって思ってたんだ」 でも宮地くんが来てくれたからもう大丈夫だよ、と言葉を付け足したらみるみるうちに宮地くんの顔が赤くなっていって、うるせぇと言われた。 「ひくぞ、って言わないんだね」 「うるせぇうるせぇ」 「宮地くん」 「あ?」 大好きだよ、と耳元で囁けばまた宮地くんの顔は赤くなっていった。宮地くんはそのまま私を抱きしめて、俺もと小さく呟いてくれた。ほら、私、一人じゃなくなったよ。 ∴Because I love you. ------------------ かりんとうさまのリクエスト分です。 宮地くん初めて書きました…! |