空にはすでにきらりと星が瞬いている。はぁと吐いた息は白くなることはないけれど、夜になれば感じる風はまだ冷たい。学年末テストがつつがなく終了して、部活も解禁した。先ほどまで走り回っていた身体はまだ少しだけ熱を持っていて、だから、冷たい風は心地良いくらいなのだけれど、それでも隣を歩くヒロトがいつかよりもずっと近い位置にいることに文句は言えなかった。ともすれば触れ合ってしまいそうな指先に心臓が少し跳ねる。
 押し切られる形、とは少し違う気がするけれど、ヒロトと恋人という関係になって数日。あの時ヒロトに言った不安が解消されたわけではないし、ヒロトと自分が釣り合うかと言えばノーだと思う。それでも、考えてみればとてもシンプルなことで、ヒロトのそばにいるための自分に近づいていけるように努力すればいいのだ。まずはその一歩としてヒロトと同じ高校にいくために今までよりももっと、勉強に熱を入れることにした。そうしていると、同じように今までよりも少し、勉強をしていることが多くなったヒロトと一緒にいられる時間が増えるなんて言う浮かれた理由は……ほんの少しだけ、ないわけではない。
 ヒロトのように将来を決められたわけではないけれど、それは、ヒロトの隣で、少しずつ決めていけばいいと思う。胸に描く未来がないわけではないけれど、――それはまず自分次第なのでしばらくは心に秘めておくことにする。

「リュウジ」

 考えごとをしていたことを責めるように名前を呼ばれる。緑川、とは呼ばれなくなった。代わりにリュウジという名前を連呼する。少し恥ずかしいけれど、名前を呼ぶ時のヒロトの顔があんまりにも優しいものだからいつもなにも言えない。
 なにかを答える前に指を絡めてくるヒロトは一体こちらの心臓をどうしたいと言うのだろう。「ちょっと、まだ、道路」と言うけれど聞こえないふりをされた。お日さま園に続く道はもうこの時間、ほとんど人は通らない。――だから、仕方ないなぁと心の中で呟く。振り払えないのはヒロトがあんまりにも嬉しそうな顔をするからで、その指先を離したくないなんていう乙女な考えではない。仕方ないのだ。
 ヒロトの指先は、やっぱり運動したばかりだからか普段よりも少し熱を持っていて、その熱にまた自分の熱も上がっていく気がした。



愛おしい、の、意味を知る



(2012/03/10 * title)
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