ヒロトがお日さま園に帰ってきてから数日が経った。はじめはどこかそわそわしていた園の中だが、次第にヒロトがいる日常に慣れつつある。その中で自分だけが妙に浮いていることに気がついてた。なんとなく、ヒロトがそばにいる、と言うことにそわそわしてしまう。それはけしていやな感情ではないのだけれど、なんとなく、なんとなく、ヒロトのそばにいることが減った。それを寂しいと思うのはお門違いだとわかっているのだけれど、それでも寂しい。遠くでボールを蹴るヒロトをぼんやりと見つめて、ため息を吐いた。
 あいたい、と確かに思ったはずなのに実際に会ってからはそううまくはいかなかった。ヒロトはどこかこちらに気を遣っているようだし、そういうヒロトへの接し方を知らない。

「なんだ、リュウジ、恋煩いか」
「はぁ?!」

 もう一度零れ落ちてしまったため息に突然後ろからツッコミが入る。驚いて振り向くとしたり顔をした涼野がいた。

「・・・だれが、だれに?」
「お前が、ヒロトに、だ」

 淡々と告げられた言葉に、なにそれ、と返した。その答えに涼野は意外そうに目を瞬かせた。

「気づいていないのか」
「ごめん、意味が分からない」

 眉をしかめてそう告げてやると、やっぱり目をぱちくりとさせた涼野はそれでもすぐにふっと笑った。意外と鈍感なんだなぁなんて、涼野に言われたくはないのだけれど。言い返そうとしたけれどすでに涼野はひらりと立ち去った後だった。真夏の風が緩やかに頬をなでて、ポニーテールを揺らす。その風に導かれるように視線を先ほどの位置に戻す。
 ばちり、と。
 ヒロトと視線が合ってしまった。にっこりと笑われるからぎこちないままに笑顔を返す。瞬間心臓が高鳴るのはきっと、涼野が恋だなんて単語、口にしたからだ。



ゆえに、臆病になる



(2012/02/28 * title)
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