(*お日さま園の場所とかいろいろ捏造)
(*まだ付き合ってない)



 真夏の太陽はじりじりと肌を焼いていく。見上げる空は白い画用紙に絵の具をぶちまけたかのようなムラのある水色で、簡単にちぎれてしまいそうな白い雲がいくつもいくつも浮かんでいた。お日さま園からは近くの空港から飛び立つ飛行機がよく見えて、今も一機、飛び立ったようだ。遠くなっていくそれを見ていたら突然後ろから頭を叩かれた。

「・・・ったぁ、大夢」

 べちんといい音が鳴ったそれにむっとして振り向くとものすごく呆れた顔をした大夢が立っていた。

「リュウジ、集中力なさすぎ」

 大げさなため息とともに吐き出された言葉にはっとあたりを見渡す。そう、いまは練習中だった。今日は園で一大イベントがあるのでいつもよりはぐっと少ないけれど。ゴールに立っている砂木沼は仕方ないなと言うように笑っていて、なんだか見透かされているようで少し恥ずかしくなった。

「だから意地張ってないで行けばよかったのに」
「別に意地張ってるわけじゃないし」

 決まり悪そうに砂木沼から視線を逸らしたこちらにやっぱり呆れたように大夢がこぼした。とっさにした反論は意地を張ってます、と言っているようなものになってしまったけれど。きらり、飛行機が軌跡を残してまた飛び立っていく。
 FFIが終わり、イナズマジャパンとしてライオコット島に行っていた面々が日本に帰ってくる。立場としてはそれこそ空港まで出迎えに行ったっておかしくはないのだけれど、なんとなくいけなかった。代表からはずれたことを根に持っているわけではないのだ、と思っているのだけれどどんな顔をしていいかわらかなくなってしまって「やめておく」とヒロトに伝えたのは少し前の話だ。結局最寄りの新幹線停車駅までヒロトを迎えに行った園の面々にも混じらずにここで練習をしている。

「リュウジはほんと、ばかだよなぁ」

 しみじみと大夢が言って、砂木沼が頷く。言い返そうとした瞬間に放り出していた携帯が鳴り出して一瞬三人で顔を見合わせる。

「私のだ」

 ごそごそと鞄を漁った砂木沼の携帯は未だにけたたましい呼び出し音を鳴らしていて、それが電話であることを告げていた。とくんと心臓が跳ねたのは、その瞬間太陽が余計に光を増したからであって着信に記される名前が見えてしまったからではない。基山ヒロト、と記されたそれはすぐに砂木沼の頬の部分に隠されて見えなくなる。

「だれですか?」

 大夢には見えていなかったらしい、きょとんと首を傾げている。砂木沼はその大夢の疑問には答えずこちらの耳に無理矢理受話器を押しつけてきた。ざわざわと雑音が混じる向こうの世界で、「あ」とよく知っている声が鼓膜を揺すった。信号に変換された声は、若干低く聞こえる。

「緑川?」

 名前を、呼ばれて。
 そんなことけして初めてじゃないし、何度も何度も呼ばれてきたけれど、どうしてだかわからないままぼんやりと視界がかすんでいく。うぐっと漏れた嗚咽にあわてたらしい基山はそれでもすぐに笑った。

「ただいま、緑川」

 緩やかに紡がれた声に感じるのが嬉しさだけじゃないことが、少しだけ苦しい。苦しいけれどどうしようもなくて、泣きながら笑った。

「・・・おかえり、ヒロト」

 早くあいたい、と素直に思った。



素直になるのが怖い



(2012/02/28 * title)
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