*拍手ありがとうございました(*´∀`*)
*お礼文はきどふど/基緑/基緑+10/天京/マサ蘭の5つです。ランダムです。
*このお礼文は【マサ蘭】になります



※デレマサキ


 いつからこんなに腑抜けてしまったのだろうと思う。二人きりの部屋、ローテーブルに置かれたココアが波紋を広げて、すぐに収束した。霧野の部屋に来るのはこれで三回目ほどになるけれど、その容姿からは想像も付かないくらいかわいげのない殺風景な部屋だった。それでも押入をあけるとごろごろとぬいぐるみが転がり落ちてくるから、一回目にきたときにそれを笑ってやると、なんと大半が男からのプレゼントらしく笑いが引っ込んだ。そりゃ何度裸をみたって一瞬女かと思う霧野だから仕方のないことなのかもしれないけれど。

「それで、どこがわかんないんだよお前」

 さらりとピンクの髪が揺れて近づいてくる。「わっ」と驚いた声を上げると、どうしてか眉間にしわを寄せた霧野がぼぉっとしてんなよ、と言った。そう、今日は霧野に数学を教えてもらうためにきているのだ。
 サッカー漬けの毎日を送っているとは言えサッカーだけではどうしようもないのが中学生の現実だ。数学が苦手らしいとどこからか聞きつけて聞いて、しかたないなあ教えてやるよとなぜか楽しそうに笑った霧野の言葉から一時間、宣言通りに数学のノートと二人でにらめっこしている。
 どうして、と思う。
 どうしてこうも簡単に流されてしまうのか。はじめはあんなに嫌いだったはずなのに、だ。いつの間にかずるずると一緒にいて、もっといえばキスなんかをしてしまう仲にもなってしまった。変なのはさらさらとペンを動かすここの先輩も同じだと思うのだけれど、そこまで考えると視線をあげた霧野に「ぼぉっとすんな、狩屋」と怒られた。
 へいへいと返事をしながらノートに視線を落とす。そうするとその髪の毛が視界に入ってどうしてかそんなことにもどきどきしてしまうのだ。そんな時間を優しいと認識している自分が一番どうかしているのだということも、やっぱりちゃんと自覚しているのだ。



(優しい時間/capriccio




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