仕方のない話

『らーいーぞーうー!!』


「うわぁ!」


「雷蔵!大丈夫か!?おい!彪流!雷蔵に急に飛び付くなと何回言えばわかるんだ!」


『たははあ。ごめんごめん!雷蔵見つけるとついね。ごめんな?大丈夫か?』


「う、うん。大丈夫だよ」


『良かったぁ〜』


にへぇ〜と言う効果音がつきそうな笑顔で謝りながらも僕に抱きついたまま笑う彪流。
このやり取りは日常茶飯事だ。だって僕たちは恋人どうしだから


『雷蔵だーい好き!』


「僕も好きだよ?」


『本当に?良かった!』


ニコニコ笑いながら毎日そうやって僕に好きだって言ってくれる。それが恥ずかしかったりするけど凄く嬉しかったりもする


「〜〜…っ!ら、雷蔵から離れろ!」


『あー!三郎こそ離れろよ!俺の雷蔵だぞ!』


「私のだ!」


「二人ともやめなよ!」


三郎は彪流から僕を引き離して抱き締める。旗から見れば三郎が彪流にヤキモチを妬いてるように見えるけど実際は違う。僕を抱き締める三郎の手が僕の腕をミシミシと音がなるくらい握り締めてくる。かなり痛い。そして彪流を見る目は嫉妬ではなく悲しみの目をしていた。
これは三郎に限ったことではない。僕の友達や先輩方、後輩まで僕に嫉妬して彪流と僕の邪魔をする。彪流は全然気付いてなくて、なんだよー!とか言いながらプンスカ怒っている。
いつものくだりを終えてまた僕に彪流が近づいてきて僕の手に自分の手を絡めてきた


『雷蔵〜三郎がいじめるんだ!ひどいだろ?三郎なんてほっといて二人で朝飯食いに行こーぜ?』


「もう…、三郎もいい加減拗ねてないで行くよ?」


「わ、わかってるよ!」


『俺と雷蔵の邪魔するなよ?』


「う、うるさい!私は先に行くからな!」


「あっ…はぁ…全く三郎は;」


『ほっとけばいいよ!いっつも俺と雷蔵の邪魔してさ!』


「………鈍感」


『えっ?何?』


「なんでもないよ」


『ふーん……』


この鈍感さが可愛かったりするんだけど、やっぱり恋人の僕としては心配だし嫉妬もする
どうしたもんかと腕を組んでうんうんと考えていると


『雷蔵』


「!な、なに?」


考え込んでしまってまた寝てしまいそうになっていた意識を彪流にむける
すると彪流はいつも見たことが無いような妖艶な笑みを浮かべながら僕を見ていた


『俺、知ってるよ?』


「え、何が?」


『あいつらが本当はどう思っているか』


「!!!!」


『ビックリした?』


「う、うん」


まさか、気づいてたなんて
吃驚しすぎてドモってしまった僕を彪流が引き寄せる


『知ってた、けどどうだっていいんだ。あいつらや先輩たちには悪いけど』


「え?」


『だって俺が好きなのは雷蔵で雷蔵が好きなのは俺。それで良くない?』


そう言って誰が通るかもわからない廊下で僕に口付けをしてきた


「だ、誰かきたらどうするのさ!」


『関係ないよ?見せつけてやれば良いんだからね?』


そう言って笑う彪流の顔が見れなくて僕は俯くことしかできなかった


『それにね?』



邪魔されるのはかなりムカつくけど嫉妬してる雷蔵の顔が堪らなく可愛いからさ



またさっきの妖艶な笑みを浮かべながら僕を見つめる彪流に
やられた、とこれも惚れた弱味かとため息が漏れたのは仕方ないことだ


「彪流、」


『ん?何?』


「好き、だよ」


『うん、知ってる!』



さあ!早くご飯食べにいこうといつもの笑顔に戻って僕の手を引く彪流
いつもみんなに遠慮して中々触れ合えなかったけど遠慮する必要なんてどこにもなかったなと考えながら食堂に足をむけた



そのあと食堂で此れ見よがしにお互いにアーンして食べさせあう僕らを見て大絶叫が起こったのも仕方のない話だ



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