嫉妬は気持ちいい?



俺と彪流が付き合ってもう半年になる。
仲も良いしその…か、身体の相性もいいと思う。(彪流としかしたことないけど)
何にも不満はないんだけど、けど、彪流は全然ヤキモチみたいなのを妬いてくれないのだ。


俺が勘ちゃんと二人で町に出掛けるって言っても笑顔で送り出してくれるし(彪流がハチと二人で出掛けるって言った時俺はごねた)
俺が女装の実習で潮江先輩と町に行くと言っても笑って送り出してくれた。(彪流が善法寺先輩と行くって言った時は俺は泣いた。善法寺先輩が女役だったし)


いつだって彪流は笑顔なんだ。スッゴク優しくて怒られたことなんて一度もないし、寧ろ怒った顔を見たことないくらい優しい。そんな彪流も好きだし格好いいけど嫉妬してくれてる顔ってのも見てみたい!
なんかいっつも俺ばかりが好きみたいで寂しいし…告白したのも俺からだったし、あの時も彪流は笑顔で頷いてくれたな。



「と、いうわけで彪流にヤキモチを妬かせてみたいから手伝ってくれ。」

「どういうわけだよ!!」

「うるさいぞ八。」

「う〜ん。やめたほうがいいんじゃないかなぁ?彪流怒るかもしれないし、でも兵助もちょっぴり可哀想だし、彪流が怒った所を見たことないから興味もあるようなないような…。」

「おーい雷蔵帰ってこーい!」

「面白そうー!で、具体的にどうするの?」

「……考えてない。」



ズベッ!!



「なんじゃそれ!ちょっとぐらいなんかないのかよ?!」

「だって!俺が思い付く限りのことはやってみたけどいつもニコニコしてるだけでさ…」

「兵助好かれてないの?」

「ガーン!!」

「勘右衛門!!」

「冗談冗談!それでさっきから黙ってるけど三郎はなんかないの?」

「そうだなぁ。兵助。今までお前がヤキモチを妬かそうとした相手役は男だったのか?」

「まぁそうだけど…。」

「女では試してないのか?」

「女の知り合いなんかいないし、くのたまは恐ろしすぎる…!」

「何が言いたいの?三郎?」

「ふっふっふ。こういうときこそこの変装名人の鉢屋三郎様の出番じゃないか!」

「変態名人の間違いじゃないの?」

「「「あはははは!」」」

「ら、雷蔵!お前らは笑うな!」

「ごめんごめん!でどうするの?」

「ふん!よく聞けよ!私が変装で美女に化けてやるからそんな女と兵助がイチャついてれば彪流も少しは動揺するんじゃないのか?」

「「「「なるほど!」」」」

「よし!じゃあ早速実行にうつすぞ!私と兵助がいるところにお前たちが彪流を連れてくるってことで良いか?」

「うん!みんな頼んでも良いか?」

「兵助のためだからね〜任しといて!」

「それくらい楽勝だ!」

「それじゃあまた後でね!」



***********




僕らは打ち合わせ場所に彪流を連れていくため三人で探していた。


「彪流何処かなぁ〜?八知ってる?」

「今日は委員会が無いから長屋でのんびりするとか言ってた気が…。」

「よし、じゃあ長屋に行ってみよう!」


八の発言を頼りに長屋のほうに足をむけた。






「あっ彪流いた!おーい!彪流ー!」


五年長屋の縁側に腰かけて日向ぼっこをしている彪流を発見した。


『おー。みんなどうしたんだ?』

「彪流今空いてる?」

『あぁ。大丈夫だ。なにか用事?』

「うん!今から皆で町に行こうって話になったからさ彪流も行かないかなって思って。」

『構わないけど兵助と三郎は?』

「三郎はおつかいでいないよ。兵助はさっき呼びだしされて行っちゃったよ。」

『ふーん。そうなんだ!じゃあ用意するから待ってて!』

「じゃあ俺みんなの外出届けもらってくるわー。」

『おー八頼んだ!』


とりあえず予定通りに進んでてほっとする。彪流が着替えるのと八が戻ってくるのを待って兵助と三郎の待つ中庭まで彪流を連れていく。
そこで二人が抱き合ってるのを見て彪流がヤキモチを妬いてくれるのか…。兵助が健気に頑張ってるんだからちょっとぐらい反応を示してくれると良いなぁと考えていた僕らはこのあと後悔することになる。






**********





俺と三郎は三人が彪流を呼んでくるまで最終確認をとっていた。


「私が兵助に迫るから兵助はそれをやんわりと拒否して私が強引に抱きつきにいく。それで彪流たちがくる角度からはちょうど口付けをしているように見えるから!流石にここまでやればヤキモチの一つや二つやいてくれるんじゃないのか?」

「ここまでやっていつものように笑顔ですまされたら俺流石に立ち直れない……。」

「だ、大丈夫だって;あっ!来たぞ始めるぞ!」

三郎がそう行って俺と位置をかえて三郎の顔が見えないように彪流たちから背をむけた
彪流がこちらを見ているのを感じながら俺たちは気付いてないフリをして演技を始めた



「兵助さん…お慕いしています。」

「こ、困ります!俺には…!」

「嫌っ!聞きたくない!」


そう言って三郎が俺に抱き着いてきて口付けをしたフリをした。
(彪流どんな反応してくれるかな…)
俺は淡い期待を抱きながら彪流のほうに目線をやった


「!!!!!」


いつも笑顔でいっぱいの彪流が無表情でこっちを見ている。思った以上の反応に俺は少し青ざめてしまう。(周りの三人もワタワタして焦っている)そんな俺の変な態度を変に思ったのか三郎が振り向こうとした瞬間…




ガッ!!





『なにやってんだ?』




無表情のままいつのまにかすぐそばに来ていて三郎の頭を掴んでいた


『なぁ。何してんだって聞いてんだが、お前ら耳ついてんの?』

「いや、彪流こ、これは;」

『あ?』

「ご、ごめんなさい!」

『で、さっきから黙ってるお前なんなの?俺の恋人って分かってて手出したの?死にたいの?』

「彪流…!」


彪流が…!妬いてくれてる!俺はそんなことを考えているバヤイじゃないのに素直に喜んでしまった。(三郎が青ざめているがしったこっちゃない)


「(おい!三郎!このあとどうするんだよ!?)」

「(こ、ここまで怒るとは思わなかったから考えてない;)」

「(馬鹿か!お前は!)」


こっそりと矢羽音で会話をしていると…


『よし、お前死刑な。女だからって俺は容赦しないから。誰のもんに手だしたか教えてやるよ。』

「ひぃ!彪流!私だ!三郎だ!」

『は?三郎?おつかいでいないんじゃなかったのか?』

「いや、これには深いわけが…;」


三郎が言い訳しようとした瞬間…





バキッ!!





「えっ?!」

『三郎!!お前覚悟できてんのかー?!あぁ!?』

三郎が吹き飛んで木にぶつかって目を回してるのを見て呆然としている俺の前に三人が飛び出してきた


「ちょっ!彪流落ち着いて!違うんだって!」

『お前らも一枚かんでんのか?!覚悟しろよ!!』

「いや、待て待て待て!聞けってー!」

「これには訳があるんだってばー!」

『うるせぇー!!』



三人の叫び空しくボコボコにされていくのを俺はガタガタと震えて見守るしかなかった






*********




『で?』

「「「「「ごめんなさい…」」」」」


あの後なんとか彪流を落ち着けて俺たちは横一列に並んで正座させられている。


『なんでこんなことしたわけ?』

「それは…;」


彪流にヤキモチを妬かせてみたいからってだけだったのにこんなことになるとは思ってなかった。でもいつまでも黙ってる訳にはいかないので俺たちはことの経緯を説明した


「……と、いうわけなんだ。」

『ふーん。兵助はそんな風に思ってたのか。』

「うん…。だって彪流は俺が誰かと出掛けても何にも言わないしいつも余裕そうだし、俺だけ好きみたいで寂しいし…」


恥ずかしかったけど今言わなければ一生言えない気がして今まで思ってきたことを言った。


『………はぁ…。俺そんな余裕そうに見えた?』

「違うの?」

『………この際だから言わせてもらうけど全然違うし。俺はどっちかって言えばかなり嫉妬深いほうだし…本当は誰かと出掛けんのも嫌だったけどでも兵助が笑顔の俺が好きだって言ったから我慢してただけ!』

だから言いたくなかったんだ!とか言いながら顔を真っ赤に染める彪流を見て俺は嬉しさや恥ずかしさが混じってどういう顔をすれば良いのか分からなかった。


『けど!もう我慢しないからな!兵助!行くぞ!』

「えっ?何処に?」

『外泊届け貰いにだよ!…このまま終われるわけないだろ…覚悟しろよ。』

そんな捨て台詞をはいて彪流はドタバタ足音をたてながら廊下を走っていった


「私たちいったいなんだったんだ?」

「殴られて惚気られただけだったね。」

「ってか彪流凄く怖かった;普段優しい人を怒らすとこういう目に合うんだね。」

「今度からは気を付けよ;でも兵助のことそれだけ好きってことだよな!」

皆の批難の視線やセリフを浴びながらも俺は幸せに浸っていた。今回は俺の勘違いで皆を巻き込んでの大騒動になってしまったけど俺は彪流から愛されてるんだなって感じれて幸せいっぱいであった。
このあと本当に愛され過ぎて大変なことになったのは俺と彪流だけの秘密…?




end………?



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