Tolerant | ナノ


  三人の子供


『ん……?これは……。』


先程の声を頼りに歩を進める。今ここが何処の森でいつかはわからないが嫌な予感がしてならない。私の[アレ]が正しければ急いだ方が良さそうだ。


なんだかんだと考えながら鞄の中身を頭の中で思い出しながら声のする方へと急ぐ。いざとなれば鞄の中身を使えばなんとかなるかな?と少し軽い考えをしながら私は走った。






***********






「「「うわぁーー!!」」」


「く、来るなぁ!」


「あっちいってよぉー!」


「だ、誰かぁー!」




やはり。
ようやく子供たちを見つければ私が思っていた最悪の事態がおきていた。




「「「く、熊ーー!!」」」




声でなんとなく分かっていたが子供が三人。小学校低学年くらいの男の子たちだった。
散々逃げて木の根本に身を寄せあいながら震える子供たちに熊が襲いかかろうとしているところだった。





ヒュッ




「グァァァーー!」




「「「ギャーーッ!」」」




ドシーン!





「えっ?!」


「な、なにがおこったの?!」




急に倒れた熊に驚きを隠せない子供たち。私はホッとしながら子供たちに近づいた。




『大丈夫?間に合ってよかった…。』


「だ、誰ですか?!」


『うーん;通りすがりのお姉さん?私もあんまり状況を把握してない。』


「はぁ?」


「え、でもここって…。」




学園の領内だよね?と眼鏡の男の子が二人に確認して頷きあっていた。
だったら…





『君たちはこの近所に住んでるってこと?』


私の質問にちょっと戸惑いながら警戒しつつおずおずと頷いた。
三人のその答えに思わずカッとなってしまい





パンパンパン!!





「「「っ…!ぃったーっ?!」」」


「何すんだよ!!」


「痛いよー!」




私にいきなり叩かれ怒った猫目の子と泣き出しそうな小太りの子がなにか言っていたが私は構わず怒鳴り返した。




『馬鹿!!あんたたちこの辺の子ってことはこの森にだって来たことあるわよね?!だったら大人達から今がどういう時期か教わらなかったの?!』



私の言っていることに意味が分からないといった顔をした子供たちに私は声を張り上げてしまった




『今この時期は熊が…』


「お姉さん危ない!!」


『?!』


子供の声に後ろを振り返ると熊が唸りながら前足を振り上げた瞬間だった。思わず私は子供たちを突き飛ばした。






「ガァーー!!」



ザシュッ!




『っあ…!』




避けようとしたが熊のほうが速く私の肩を爪が掠めた。流石に熊に対してあの薬の量は少なかったか…それよりも…


「うわーん!!」


「お姉さん!!大丈夫ですか?!」


『だ、大丈夫よ、ちょっとかすっただけだから。』


「でも、すげぇ血が…。」


『それよりも…熊を、どうにかしないと、今ので血の臭いを嗅いで余計に興奮してるわ…。』


「「「ひっ!!」」」





子供たちを背に庇いながらどうやって切り抜けるか考えていた。冷静になれ…!焦るな!そうやって自分を落ち着けようとするが良い案が浮かばない。私の鞄に入ってるものでもう熊を"大人しく"するものはない。





『くそっ…!どうすれば』




後ろで震える子供たちをせめてなんとかしなくてはと考える私に熊は容赦なく二撃目をくらわせようと近づいてきた。





「ガァーー!!」




もうだめだ!思わず目をつむってしまいくる衝撃に耐えようとしたがいつまで待っても攻撃はくることはなく、目を開けてみると熊は前足を振り上げたまま固まっていた。私が瞬きをしていると熊はそのままドシーン!と音を立てながら崩れ落ちた





『……どういうこと?』




私は後ろの子供たちに此処から動かないようにと一言告げてから恐る恐る熊へと近寄った。
近づいて熊を見ていると熊の首筋に何か黒い鉄のかたまりが刺さっているのが見えた。これは資料でしか見たことないが昔忍者が使っていた苦無?何故こんなものが今の世の中にあるの?ただでさえ訳のわからない所に飛ばされたり、熊が現れて気が動転しているのにこんな物まで出てきて私の頭の中はグチャグチャだった。





「大丈夫か?」


『……!?』




子供たちとは違う声に私はバッと後ろを振り返った。




『だ、誰?!何なの!いったい!』


「こちらも聞きたいことが沢山あるが、それよりもその肩の傷…。」


「「「潮江先輩!久々知先輩!」」」




後ろから現れた二人の男?(一人は確実にそうだがもう一人は声も発していないのでわからない)に子供たちが駆け寄っていった。忍者の格好をした二人に私は愈訳が分からなくなってきた。




「ぜんぱーい!!ごわがっだでずー!」


「うおっ!しんべぇ!お前は鼻水をかめ!」


「久々知先輩もう駄目かと思いましだー!」


「あぁ、もう大丈夫だ。潮江先輩が倒してくれたからな。」


『ま、待って!』




みなは知り合いだったみたいで無事を確認しあって喜んでいる。それよりも私はさっきのくくち先輩?の発言に反応してしまった。




「なんだ?」


『貴方が、熊を倒したの…?』


「あぁ。そうだが?」




それがどうした?と言わんばかりの顔で私を見る隈の濃い男に私は掴みかかった




「「「「「?!」」」」」


『どうして殺したの?!なんで殺したのよ?!なんて事をするのよ!!』


「な、何を訳のわからないことを!そうしなければお前らが…」


『自業自得よ!!』



「!?」


『あんたたちこの森の近くに住んでるんでしょ?!ならこの森と共に生きてるのよね!?だったら今森に入ったらどうなるか……っ…!』




私の突然の行動に周りは動揺していたが、私が肩の痛みに崩れると眼鏡の男の子がハッとして近付いてきた。




「お姉さん!肩の傷見せてください!」


『うるさいっ!ほうっておいて!』


「だ、駄目です!凄く血が出てます!早く治療しないと…。」


『自分で出来る!貴方たちには頼らない!』




傷はかなり痛むがそれよりも熊の死に興奮してしまい冷静でいられなくなってしまっていた。
肩を押さえながら立ち上がろうとした私を子供がとめようとするが私は気にせず歩を進めようとした




「ま、待ってください!」


『離しなさい!離して!は……ぁ……。』



手を掴まれ振り払おうとしたら急に首に衝撃がきて私は意識を手放した。




――――――――
肩の痛みなんかより心の痛みのほうが私には辛かった

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