Tolerant | ナノ


  異端のもの


潮江君のあとを歩きながら学園長先生と言われるかたのもとにむかう
道中お互いに会話はなく私の足音だけが響いていた




***********


しばらく歩いていると庵のような建物が見えてきた。潮江君のむかう先にはその建物しかないのでそこが目的地なんだろう
庵の前に座り潮江君が中に声をかける



「学園長先生。六年い組潮江文次郎です。保護した女性をお連れしました」


「うむ、入りなさい」


「はっ」


中から入室の許可が出て潮江君が襖を開け先に入りそれに私も続く
真ん中に白髪頭の老人が座っておりその隣に犬が正座していて(犬…だよね)両端に私たちを囲うように黒い忍び装束を着た人たちが座っていた。その中に森で出会った三人の子供達も座っていた。


突き刺すような視線
疑わしい目
殺気


懐かしい感覚だ


ここ数年幸せに浸っていた私は久しぶりの感覚に吐き気を覚えた
座りなさいと言われ学園長先生の前に間隔を開けて座った



「初めまして。わしはこの学園の学園長をしておる大川平次渦正じゃ。おぬしの名前は…?」


『…宮坂果南と言います』


「いい名前じゃな。なにやら子供たちを助けてもらったようで」


『私は別に…結局潮江君に助けてもらうことになりましたから』


「しかし、子供たちを庇って怪我をしたそうじゃないか。礼をいわせてもらう。ありがとう」


『いえ……』



ニコニコ笑って話しかけてきているが威圧感が半端ない。さすが学園の長



「ごっほん!え〜話は変わるんじゃがいくつか聞きたいことがあるんじゃがよいかのう?」


『私で答えれることでしたら…』


「そう構えんでもよい。まず、何処から来なさったんじゃ?」



きた。どう答えたら良いんだろう。ここに来てから今までのことを推測するとここは私がいた時代じゃない
恐らく過去
それも何百年も前
それを素直に話したところでこれだけ疑わしい目をむけられているのに
でも嘘をついたらもっとややこしいことになりそうだし



『(ここは正直に)私は東京にいました』


「とうきょう?はて、聞いたことがないのう」


『でしょうね』


「……どういう意味じゃ?」


『私も現状を把握しきれてないんですが、私からも一つ質問があるんですがよろしいでしょうか?』


「なんじゃ?」


『今はなに時代ですか?』


「?今は室町時代じゃが…何を言っておるんじゃ?」



やっぱり…非現実的過ぎるけれど私の予想は当たっていたわけか
そんなに昔だとは思わなかったけど
はあ…と思わずため息が出てしまい学園長先生にどうしたんじゃ?と聞かれてしまった
犬も心配そうに見ている



『信じてもらえないと思いますし私も信じたくないんですが…私は今からおよそ5、600年後の未来からやってきたみたいです』



私がそう言うと周りがザワザワし始め「出鱈目だ!」「狂っている」「ふざけたことを」「どういうつもりだ?」等々色々な意見が飛び交っていた



「静かに!!うむ……俄に信じがたいが、辻褄があう部分もある」


『辻褄?』


「生徒たちからの報告でおぬしは光に包まれて何もないところから現れたらしい」


学園長先生の発言でさらに周りがザワザワしてきた
光に包まれて現れたって私も初耳なんですけど
静かにせんか!!と二度目の学園長先生の怒声で周りは静かになった



「それに、勝手をして悪かったがおぬしの持ち物を調べさせてもらった。が、中に入っていたものは我々では分からぬものばかりで。書物に関しては大半が読めんかったし。南蛮の物かとも思ったんじゃがそれだけではない気がしてのう。おぬしが未来から持ってきたというのが一番しっくりくる」


『南蛮というのも強ち間違ってはいません。私たちの時代では海の外の国のことを外国と言ってそこから持ってきた物もありますから』


「そうか…何故こちらにやってきたんじゃ?」


『…私にも分かりません。家に帰ろうとして信号待ちをしていたら車にはねられて…』


「くるま、とは?」


『鉄の塊、からくり、と言ったら良いんでしょうか、とにかく馬よりも速く走れる乗り物です』


「未来にはそんなものが…それで、はねられたと言うわりには肩の傷以外は見当たらぬが?」


『それが私にも不思議で…あのスピードではねられたらまず助かりません。死んだと思ったら』


「森にいたと?」


『はい』



うーむ…と唸りながら考えこんでいる。そりゃそうだよね。私なら相手にもしない、そんなアホみたいなこと言うやつ
周りのみなさんは口には出していないが疑いの眼差しで見つめてきているから信じてないでしょう
数人真剣に聞いている人もいるが(子供たちはすっげー!とか言ってる。潮江君はずっと黙りだし)



「世の中には不思議なことがあるんじゃなあ。長生きしてみるもんじゃ!」


『………信じるんですか?』


「信じがたいことじゃがおぬしが嘘を言ってるようには見えんしのう。じゃがもう一つ聞かせてほしいことがあるんじゃが……」


『……なんでしょう』


「熊に襲われたとき森に詳しいような話をしていたときいたんじゃが未来からきたはずのおぬしが何故それを?」



潮江君に聞かれるかもしれないと言われていたけどどう答えたら…
潮江君は期を使って深くは聞いてこなかったけど今未来からきたって言ったのに森に関して知っているような口ぶりでは辻褄が合わない
あまり話したくはないけど暈かして話すか



『それは私にそういう能力がある、とだけ言っておきます』


「その能力とは?」


『お答えできません』


私がNOと答えたらバンっ!と音がして忍び装束姿の眼鏡をかけた人が怒りだしてきた



「貴様!!いい加減にしろ!!未来からきたとか分からぬことを言ったり森について詳しかったり、能力があるだとかわけの分からぬことばかり言いおって!物の怪の類いか!?」


「野村先生!落ち着いて!」


「離してください!山田先生!」


「先生方落ち着かんか!まだわしの話が終わっておらぬ!」


「っぐ…!!も、申し訳ありません。少し取り乱してしまいました」


『こういうことですよ』


「え?」


『私はただでさえ未来からきたってことで不審者として疑われてます。信じてない方が大半でしょうが。それに合わせて不可解な能力。話しても疑われる。話さなくても疑われる。だったら私は話したくありません。……"異端"は忌み嫌われますからね』


「すまぬ…、不愉快な思いをさせてしまって」


『…慣れてるので平気です』


シーンとした室内で私の冷たい声だけが響いた





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突き刺さる嫌悪の視線
私はそれから逃れることが出来ないの?


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