グダグダな日常



天気は晴れで気温は20度くらい、風もそれなりにあって、ぽかぽかとした昼寝日和な今日−−俺達、男子テニス部(一部)は大切なものを賭けた真剣勝負を部室で行っていた。
現在部室にいるのは、俺とがっくんと亮の三人。俺とがっくんは向かい合い、腰を低くして腕を構えた状態でいる。一方亮は、そんな俺達を呆れた表情で見ていた。
まあ、いつものことだけど。そう思い、呆れた表情をする亮はスルーして、俺はがっくんの目を見て確かめるように言葉を紡ぐ。


総司「次、俺が勝てば……分かってるよな」
岳人「ああ…分かってる」


緊迫した空気が部室を包む中、俺とがっくんはじりっと間合いを詰め、お互いの右腕を引く。そして、次の瞬間−−俺とがっくんは、腹の底から声を出した。
それと同時に前に突き出した右腕。俺の右手は指を全て握った状態で、がっくんの右手は二本の指を伸ばし、それ以外は全て曲げた状態だった。


岳人「だぁぁぁぁああぁあっ!!また負けかよぉ!くそくそ!!」
総司「フッ…一つ教えてあげるよがっくん。君はいつもピンチになるとチョキを出すんだよふはははははっ!!」
岳人「何こいつかなりムカつく!」


え、ムカつく?いやぁ、褒め言葉だよ。 別に褒めてねーし!
そんな会話をする俺達に、呆れた表情をしていた亮が溜め息混じりに声を掛ける。


亮「お前ら、よくじゃんけん如きで盛り上がれるな」
岳人「如きじゃねーよ如きじゃ!」
総司「そうだそうだー。奢りを賭けたじゃんけんなんだぞー」
亮「今一番何よりムカつくのお前のその棒読みなんだが殴っていいか」


だが断る。 遠慮すんな、一発くらい殴ってやるよ。 俺Mとかじゃないし。寧ろがっくんがMだし。 なんでだよ! だって向日だし、Mじゃん。 うっわこいつ汚ねぇ!! 俺が汚いとか、がっくん目ェ腐ってんじゃないの。 その汚ねぇじゃねーよ!
ぎゃーぎゃーとグダグダな会話をしていると、部室のドアがガチャリと開き、それに気づいた俺達の頭にガツンッ!とテニスラケットが飛んできた。


「「「っ〜〜〜!!?」」」
跡部「何くだらねえことやってんだ。アーン?」


頭に手を添え、痛みに悶える俺達を見下すようにアホb…跡部はそう言い、落ちたラケットを静かに拾った。
いや、だからラケットは痛いんだって。何回言えば分かるのかしらこのアホ部は。


侑士「おい総司、全部聞こえとるで」
総司「黙れロリコン。お前のその伊達メ叩き割るぞ」


にっこりとスマイル付きでそう言うと、ロリコンはさっと伊達メを守るように手を添えた。いつかこの伊達メを叩き割ってやろうと、俺はおじいちゃんに誓いました。


侑士「もうつっこまないで!?」
総司「別に侑士がいなくても亮がいるし。ねー」
亮「ねー、じゃねえよ!」


再び騒ぎだそうとする俺達を、跡部はぎっと睨みつけラケットを構えた。
ラケットは痛いから俺は大人しくすることにした。それは亮も侑士も同じだったようで、汗を流しながらその場で固まっていた。
一方、がっくんは未だに痛いのかごろごろと転がっていた。なんか面白そうだったから蹴ってみたら、涙目で怒られた。うん、面白かった。
跡部は小さく溜め息を吐き、気を取り直すために咳払いをする。そして、いつもと同じように俺達に言った。


跡部「いいからテニスするぞ」


まだ全員揃ってませんけど。