届かない想い







今日は、今まで溜まっていた研究が全て片付いて、久しぶりの休日になった。
ポケモン達も研究に連れていったから疲れているだろうと思い、ゆっくりしようとは思ったのだが…職業病なのかポケモンと触れ合わないと、落ち着けなかった。だからといって自分のポケモン達は疲れているから、無理はさせず休ませてあげたい。
おじいさま……じゃなくってオーキド博士の研究所にでも行って、ポケモンと触れ合うかな…と考え行ってみた。
オーキド博士に、何時でも入ると良いといわれて渡された合鍵をつかって、研究所の中へ入る。それから、ポケモン達を外へ出せる為の広場に行こうとして、持ち主が分かる様にモンスターボールの棚に書かれたプレートの名前に、目をやる。そこで懐かしい名前を見つけた。


「−サトシ」


懐かしい名前に思わず言葉が漏れる。すると、今まで必死に忘れようとしていた記憶や、この感情が漏れだした。彼に最終会ったのは何時だったか……
そんなことを考えていると、目の前にあるモンスターボールが揺れる。よく見ると中にはフシギダネがはいって居た。


「もしかして…外に、出たいとか?」


何と無くそんな気がして声をかけてみると、ボールが揺れた。多分、これは正解ととって良いと思い、フシギダネが入ったモンスターボールを手にもち、広場にでる。

広場にはそんなにポケモンはいず、研究員の数人がポケモン観察程度に出している数匹だった。あぁ、だからフシギダネがあそこに居たのか、と思いながら手にもったモンスターボールからフシギダネをだしてやる。
ダネ!と声をあげて、嬉しそうにしている姿をみながら、頭を撫でていると頭を手に擦り寄せてきた。
当初はサトシのライバルだった印象のが強いのか、あまり懐いてはくれなかったが、たまに見かけたら頭を撫でたりしているうちにどうやら懐いてくれたみたいで、今ではかなり好意をもってくれている。別に特別フシギダネが好きな訳では無かったから、そんなことする必要は無かったけど…やっぱり好きな人の好きなポケモンには懐かれたい訳で……僕らしくない行動に思わず笑みがでた。
そんな僕を見てか、フシギダネが不思議そうに僕をみて、頭を傾げる。


「…君の主人について考えてたんだよ」

「ダネ?」

「全く…君の主人は本当に単純馬鹿だよね。いきなり帰ってきたかと思えばいきなりどこかに行くし、連絡一つも寄越さないで。」

「……」

「しかも君の主人は今はイッシュに居るらしい。ここからとても遠い場所……オーキド博士から聞かなきゃ居場所さえ知らなかった。」

「……ダネ、」

「ごめんね。大切な君の主人、サトシの愚痴を言っちゃって…」

「ダネ」

フシギダネは必死に首を振ってくれた。その姿に涙が出そうになる。たまに、あるのだ。フシギダネに話しを聞いてもらうことが……
まったく、僕らしくない。
最初は近所の子、そして同じトレーナー。それからは、ライバルとしてみていた。のに、いつの間にか好きになっていた、恋愛として。
最初はどれ程馬鹿げている、有り得ないと思ったか。でもサトシに会うと、胸がどうしようもなく苦しいのだ。思い付きで行動して、無茶ばかりで、単細胞で、恋愛には疎くて、でも人が沢山ついて来て…いつも周りの人間は笑顔で、ポケモンには慕われて−
ほら、悪いところを考えているはずなのに、良いところしかでてこない。こうやって考えている今も、胸が苦しい。


「まったく、お子様なんだよ。サートシくん」


あぁ…本当に僕らしくない。
彼のことを、サトシのことを考えるだけで、視界が滲む。いつから僕は泣き虫になったのか。涙が次々に出てきて、止まらない。他の人も居るのに恥ずかしい…
ふと、温かい感触が頬に触れる。見てみると心配してくれたのか、フシギダネが僕に擦り寄って、微笑んでいた。ありがとう…と言いながら、フシギダネを抱きしめる。
何時でもいい、何時でもいいから…彼の元気な顔を見るだけでも良いのだ。
でも、もしも願わくば…


「−−This feeling should be transmitted.」
(この気持ちが、伝わるように)











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