答えと疑問
ふと、思う。
なんで俺は、この国に生まれたんだろう。
なんで俺は、この両親何だろう。
なんで俺は、俺なんだろう。
なんであの時にあんなことをして、あんなことが起ったんだろう。
一つ謎をあげれば、この世は謎ばかりで。
だけど、一番解らない事と言えば、なんで彼とであい、相棒になり、恋人にまでなったのか。
俺は時々意味も無い感情が押し寄せて来る。いや、正確には、性格、なのかも知れないけど。
全てに対して「なんで」と疑問を持つ俺とは違い、彼は「こうだから」と決め込む人だ。
「ねぇ、ボリス」
「なに」
「なんで俺らは出会ったのかな」
「おなじ夢を持ったから」
「なんで相棒になったの」
「上に言われたから」
「なんで上はそう思ったのかな」
「実力とかその時の考えで」
「なんで俺らはペアを変えなかったのかな」
「相性が良かったから」
「なんで恋人になったのかな」
「お互いが好きだから」
「なんで恋愛感情を抱いたのかな」
「一緒にいて、惹かれ合ったから」
「なら、この気持ちは嘘かもしれなはい」
「…逆に、なんで嘘って言える」
その言葉に妙に感心する。
確かにそうだ。
嘘かもしれないなら本当なのかもしれない。
世の中は疑問の数だけ、答えがある。いや、寧ろ答えの方が多いのかも。
形づいた答えがなければ、同じ質問でも答えが違う。
よく思うのがヒーロー物。
ヒーローが悪役がする行動を悪いと思い倒す。勿論こちら側から見ても、ヒーローの方が正しいとおもう。けれど、悪役からすればどうだろう。
中には自分のため、私利私欲にという悪役もいる。
でも逆に言えば、悪役は自らの正義があって、寧ろヒーローがしてる事が悪かもしれない。そうすると中立に立って見れば、どちらも同じと思う。
要は、世界のためじゃなく自信の思いを守るためじゃないか。地球を守るヒーローに生きたい人間は応援する。でも地球を壊す悪役に、死にたい、世の中を恨んでる人間は応援するだろう。結構はそんなもの、と言われればおしまいなんだけれど、やっぱり疑問は残る。
「またくだらねぇこと考えんのやめたら」
「くだらなくはないと思うけど」
「いや、くだらねぇ。考えても答えは出ないんなら一緒だろ」
「決めつけるのもそうだと思うけど」
「でも疑問を出して納得いく答えが出なきゃまた疑問を産むだけだろ。だったら無難な答えをつけちまう方が早い」
「だけど、決めつけてたらそれ以外の可能性も否定する事になるよ。」
「例えば」
「……もし、俺が誰か女性を任務で送るとする。勿論ボリスは休みね。それで俺は、仕事の都合上私服。そんな時にボリスがたまたまその女性と俺を見て、浮気だと思い込む。その場合、仕事なのにどうするの」
「……別れる?」
「いいよ、別れたとする。だけどそのあとボリスは同僚に俺は仕事で女性を送ってたと言うのを聞く。この場合、俺の気持ちは?それになによりボリスは?一方的に浮気と思ってて別れて、実は仕事だったって知ったら、浮気と疑ったボリスが一番辛くない?」
そういうと、唸りだすボリス。だってそうだ。他の可能性を捨てて自分が考えた思いだけ信じ込むのは悪い事じゃない。けど結論が違った場合、一番困るのは自分じゃないか。話を聞いてたら、他の案もだしてたら、こうなること以外にも予想してたら、そうやって自己嫌悪に浸ってしまう。
だけど一人一人考えは違うのだから、ボリスならどう思うんだろう。
「けどよ、」
「ん?」
「その逆もあんだろ」
「……逆?」
「もしこれと決める事が無かったら、要は疑問の繰り返しだろ。さっきの話通りいけば、浮気じゃない、ならなんで仕事と言えるのか、本当に下心は無かったのか…結局はそんな所だろ。何か一つの物に、一つの質問で完璧な一つの答えを出すのは無理なんだよ」
……言われたらそうだ。
確かに表面上完璧な答えでも見る人にとっては、矛盾した不可解な答えとなるろう。
やっぱり、世の中は白と黒だけでは分けれないものだな、と思った。
ボリスから見れば多分、俺は周りに優しくする、でも自分の意思を言わないいい人ぶったやつ。俺がボリスを見れば意志が固いが融通が利かず、周りに対して協調性がないやつ。
でもそんな二人が結局は、惹かれあって上手いこと言ってるんだから不思議だ。いや、そんな正反対な二人だからこそ、かも知れないけれど。
勿論さっき「考えてみないと分からない」なんて言いたいのを我慢したのは内緒。
とりあえず、彼が飲んでいたコーヒーが無くなったのを見て、キッチンへと向かう。
コーヒーは甘党な彼に合わせて基本より多めにミルクと砂糖をたっぷり入れて。
そういえばお菓子をだしてないな、なんて思って棚からプチーチ・マラコを出す。少なくとも、自分が食べる為に買った商品ではないとわかる甘さだ。
意外と甘党に見られるけど、そんなことはない。けれど貰い物で甘い物のを貰い、ボリスにあげれば喜ぶから貰うのだけれど。
自分用にたまたま見つけたトリューフェリもお皿にのせ持って行く。するとテーブルに置いた途端にボリスの手が伸びて来るのだから笑わずには居られない。
何だよと睨まれたがその口は忙しなく動かされてて、寧ろ愛らしく見えた。
何でもないと言って、一旦キッチンに戻り、一応二人分のグラスを持って、この前たまたまかったメルローを持ち、またボリスの横へ戻った。
こちらを向くこともなく動かされ続ける口に、今度からはもっと沢山のお菓子を最初に出してあげなきゃな、と思ったり。
疑問には正確な答えなんかないけれど。
一つだけ絶対と言える事は、俺はボリスが傍に居るだけで幸せだと言うことだ。