ギアス | ナノ

The knight who fell

17




 遂に始まってしまった東京決戦。ジノと戦場へ出た私は彼に通信を繋げた。

「ヴァインベェルグ卿、先に枢木の元へ行け!私は政庁周辺の敵を一掃してから向かう」

 今スザクは敵の主力である2機とゼロを……ルルーシュを相手にしている。3対1では分が悪い。それをジノも理解していたのか、素直に了承してくれた。

「了解、久々の戦闘だからって怪我するなよ、エルフィ?」
「冗談!誰に言ってるんだ?」

 鼻で笑った私をジノもニヤリと笑い、スザクの元へと向かった。それを確認するとコックピットの上部に設置された鏡を自分の目に合わせる。

「この力はあまり使いたく無いけど……。その時は宜しく、O.O.」

 体の中にいる相手に告げると、鏡に映る私の瞳にコードが浮き上がった。それと同時に味方からの通信を音声のみに設定する。

「エルフィ・リンツェ、敵を……一掃する」


***


「< ゼロ、政庁周辺の部隊が1機の敵ナイトメアに殲滅されました!敵は尋常では無い速さでは無いです!! >」

 オペレーターから繋がれた通信と敵ナイトメアの位置情報に俺は舌打ちをした。そのナイトメアを見れば、あれは……エルフィ?!

「あれは総督同様、優先事項第第一位の人物が乗る機体だ!! 目標を方位し捕らえよ!」
「< 了解! >」

 ……あの動きは彼女の、O.O.のギアスである"万象のギアス"だとO.O.は言っていた。自身にギアスを掛け自身と機体を高速で移動させる。言わば、ロロのギアスと同じ力を使っているらしい。
 ――そしてその力は瞼を閉じたり、視線を逸らすとその力は使えない。また連続では使用することが出来ないというリスクがあると言っていた。一斉砲撃、集団で取り囲めばエルフィを……捕獲できる。
 これでエルフィは俺の元に戻ってくるんだ。


***


 少しずつ政庁から離され、孤立化した私は内心焦っていた。向こうでは脱出したカレンちゃんとスザクが、ジノとジェレミアが戦っている。……アーニャも心配だ。助けに行けない歯がゆさと、焦りに私は操縦桿を強く握り締めていた。

「っ……、この戦い方は、」

 通常では有りえない速度で移動するだけあり、肉体を酷使するこの戦い方は長時間使用できない。次から次へと向かってくるナイトメア……そろそろ不味い。

「だけど、ナナリーを……皆を傷付けられる訳には行かないんだよっ!!」

 ギネヴィアの腰元に搭載されているハドロン砲で敵を破壊していく。……1つは先程破壊され、1つしかない状態だが文句は言っていられない。――漸く敵を全て破壊し、スザク達の元へ向かった。

「< 撃ってよ、フレイヤを!!貴方も助かるのにっ!! >」

 ニーナちゃんの声が入り、ギネヴィアが捉えた映像に私は全身の血が抜ける感覚がした。――スザクが撃とうとしているのだ。……政庁に向かって。


「駄目、スザク!!まだ政庁には……、政庁にはナナリーが!!」

 ……叫びも空しくフレイヤは撃たれ、紫色の眩い閃光が政庁を飲み込もうとしている。

「駄目、駄目!!……もう家族を、妹を……ユフィの時みたいに何も出来ないまま失いたくは、無いの……っ!!」
「「< エルフィ……!! >」」

 周りの静止を振り切って私は残った力を振り絞り、ギアスを発動する。瞬く間に私はナナリーの乗る護衛機の近くまで辿り着いた。

「ナナリー…っ、」

 眩しい位の光の中で私は手を伸ばすけど……その手は届くことなく、護衛機が光に包まれていく。


「嫌だ……嫌だよ……っ、ナナリー!!」


 ――目の前で消えてしまった護衛機に涙が流れる。……そこで私の視界も真っ白になり、意識を手放してしまった。

「駄目、エルフィローズ……。貴方は―…」


2009/04/02


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