イナズマ | ナノ

カトレア

81 正座何て無理!!




 デザーム率いるイプシロンがアタシ達の前に姿を現わしてから数日後、京都にある漫遊寺中に彼らからの襲撃予告が来たらしい。漫遊寺中はフットボールフロンティアに出場しなかったものの、かなりの実力を持った学校らしい。(今年の旭中と同じだ。……アタシが転校した事で今年は旭中は出場しなかったと聞いた)
 無闇に中学校を襲撃していたジェミニストームとは違い、イプシロンは隠れた強豪校に照準を合わせている。……彼らを倒せば、エイリア学園の本当の狙いが分かるかもしれない。そう結論づいたアタシ達はすぐさま漫遊寺中へとキャラバンを走らせた。

「ウシッシッ、ざまぁみろ!フットボールフロンティアで優勝したからって良い気になって!」

 漫遊寺中に無事着き、いきなり迎えられた壮大な悪戯(床の一部にワックスが掛けられ、滑りやすくなっていたのだ)に皆が見事に引っかかり、強大な人間ピラミッドを作っていると突然現れた特徴的な笑い方をする、小柄な男の子。どうやらこの悪戯は彼がやったらしい。いかにも理不尽な理由に塔子ちゃんが怒ってしまう。(因みにアタシは吹雪君が止めてくれた事で、ピラミッドの一部になる事は無かった)

「お前、待て……うわぁっ!!」

 逃げて行く男の子を追いかけようと塔子ちゃんが柵を飛び越えると、その下には上手い具合に落とし穴が仕掛けられていて彼女はその穴に落ちてしまった。(……思わず噴いてしまったのは内緒)
 落ちた塔子ちゃんに男の子は得意げに笑うと、何処かへと一目散に逃げて行ってしまった。


***


 男の子が去ってから途中で会った漫遊寺中サッカー部キャプテン、垣田さんの案内でアタシ達はサッカー部道場に来ていた。
 ……行く途中で彼から教えてもらった事だが、悪戯をしてきた男の子も彼と同じサッカー部らしい。名前は確か、小暮と言っていた。以前はスタメンに入っていたのだが、(攻撃的というか屁理屈というか)彼の性格の問題で補欠にしたとか。
 今は精神を鍛え直させる為に掃除などの修業をさせているのだが、それが彼にしたら逆効果になってしまった様だ。(……ひ、捻くれ君なんだね)
 そんな話をしつつ、アタシ達は道場に集まってくれた漫遊寺中サッカー部の人達にエイリア学園の説明を一通り話す。そして一緒に戦って欲しい、と。

「……成程、御話はよく分かりました」

 彼らの答えに守は期待する様にに声を上げた。しかし彼らの口から出たのは、イプシロンとの試合を拒否する、というものだった。漫遊寺のサッカーはあくまで心身を鍛えるもの、争うものではない。それが彼らの、そして漫遊寺中の信条らしい。
 そう彼らは断言すると道場から出て行ってしまった。メンバー達は訳が分からず、困った様に互いの顔を見合している。
 その様子にアタシは小さく溜息をつき、前のめりになる様に手を付いた。

(あ、足痺れた……っ)


―――
今回はKYな雷鳥さんという事で(笑)

2009/11/12


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