イナズマ | ナノ

カトレア

77 似た者同士




「わぁ、凄いな」

 早朝、アタシはテントから抜けだすと(予め借りていたボードを担いで)、白恋中校舎裏に設備されているゲレンデに1人来ていた。
 スノボが好きと紺子ちゃんに話した所、この場所を教えてくれたのだ。……多分練習時間の合間ではスノボをやる時間もなさそうだし、朝此処に来た訳だ。
 アタシはボードを地面に置き、伸びをする。身を切る様なこの寒さが今は心地よかった。

「……スノボする前に、これやらないとね」

 そう呟くとアタシは正面を向いたまま後方、地面へ倒れる。ぼふん、と軋む音がして雪がアタシを支えてくれた。(やっぱり、気持ちいいなー)
 何も跡の無い積もった雪に倒れるのって、雪国にでしか中々出来ないよね。
 思わず頬が緩み、そのまま瞼を閉じて暫く太陽の光を感じる。……不意に光が遮られて瞼を開けば、そこにはアタシを覗き込む吹雪君の顔があった。

「うわぁぁぁっ!!」
「うわぁー」

 吃驚して思わず起き上るアタシに、吹雪君も吃驚したのか飛び退くと声を上げる。立ち上がりジャージに付いた雪を払うと、吹雪君にアタシは小さく頭を下げた。

「ご、ごめんね……吃驚させちゃって」
「ううん、僕こそごめんね」

 そう言うと吹雪君は困った様に頬を掻く。……良く見れば吹雪君もボードを抱えていて、アタシの視線に吹雪君気が付くとにっこりと笑って頷いた。

「昨日飛鳥さんが学校のボード借りてるの見掛けてね。今朝来るのかなって思ったら、僕も来ちゃった」

 ごめんね、と苦笑する吹雪君にアタシは首を横に振った。寧ろ嬉しいよ。と微笑めば嬉しそうに笑いかけてくれる。

「じゃあ、行こうか」

 吹雪君の声を合図にアタシ達は滑り出した。急激な斜面をスピードを落とす事無く滑り降りて行く吹雪君に続いて行けば、彼が楽しそうに声を掛けてくる。

「凄いよ飛鳥さん、僕に付いて来れる人なんて久しぶりだよ!」
「そんな事無いよ、吹雪君も早いね!」

 一緒に付いて滑りながらアタシも返事を返せば、吹雪君も笑みを向けてくれた。


***


「あー疲れたー…」

 練習あるのに少し飛ばし過ぎたかも。と苦笑すれば吹雪君は可笑しそうに声を出して笑う。アタシ達はボードを外すと、倒木に腰を掛けた。吹雪君も疲れたのか小さく息を付いている。

「でも、飛鳥さんとスノーボードが出来て楽しかったな」
「うん、アタシも!」

 それから暫く吹雪君と談笑を交わしていたのだが、彼と話していて思った事があった。
 吹雪君に話してみようかと思って口を開けば、アタシよりも先に彼が口を開く。

「……僕ね、あの試合から思ってた事があったんだ」
「何?」
「飛鳥さんと僕って似てるな、って」

 どうやらアタシが思っていた事を吹雪君も思っていたらしい。アタシもそう思った。と口にすれば、彼は驚いた様な表情を浮かべる。

「アタシも何となく試合の時とかの雰囲気が近いな。って思ってた」
「飛鳥さんもそう思ってたんだ……何だか嬉しいな」

 はにかむ吹雪君の表情にアタシは頬が熱くなった。そう彼とは……試合時だけでは無い、もっとこう何か……根本的な何かが吹雪君とは同じ匂いがしたのだ。(女の感ってやつ?)

「似た者同士、仲良くしようね」
「うん、飛鳥さんとならもっと仲良くなれそうな気がするよ」

 茶化す様にアタシが言えば吹雪君も笑って頷く。大分時間が経ったせいか、体が冷え切って寒さでアタシが体を震わせると、吹雪君が立ち上がった。

「そろそろ帰ろうか、飛鳥さん」

 帰ったらお餅ご馳走するよ。と手を差し出してくる吹雪君の手を握り返し、立ち上がらせてもらった。
楽しみだな!とはしゃぐアタシに吹雪君も微笑んでくれる。アタシはそのまま彼の手を握り、校舎へと駆けだした。


―――
ずっと前から吹雪君が仲間になったら、書こうと思っていたお話だったので書けて満足です*^^*

2009/11/04


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