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カトレア

91 七色の恋




 ……気が付いた時には、アタシはメンバー達と一緒に波止場にいた。潜水艦は影山の手で爆破され、影すら残っていない。
 負傷をした佐久間君達を搬送する為、救急車が呼ばれた。

「佐久間君……、」

 担架に乗せられた佐久間君の元に近寄って手を握れば、彼は苦笑を浮かべた。

「ごめんな……飛鳥、」

 彼の声にアタシは胸が苦しくなって、声が出なかった。否定の意味で首を横に振れば、佐久間君は安心した様な表情をする。
 ……泣きそうな表情をしていたのだろう、アタシの表情を見て、佐久間君は優しげに微笑んで来た。

「……ずっと付けてたらかミサンガ、ボロボロになったんだ。だから……治った時、また新しいの作ってくれないか?」

 彼の優しい声にアタシは涙が零れた。涙が頬を伝い、佐久間君の頬を濡らす。

「っ……う、ん……分かっ、た」

 嗚咽を洩らして、涙でグチャグチャになりながらアタシは今精一杯の笑顔を佐久間君に向けた。


***


「雷門中と真・帝国学園の戦いは引き分けに終わりました」

 茶室の下座に座り、男は頭を下げた。男は単調に上座に座る和服を着た男性へ先程起きた試合の概要を語る。男性はそれに頷くと、手に持っていた湯呑に口を付けた。

「……スピカが芽吹いた様ですね」
「はい、仲間の負傷で追い詰められ漸く。しかしながら、まだ不安定な状況です」

 男の説明に和服の男性は構いませんよ。とにこやかに笑う。

「美しい花は時間と手間を掛けてゆっくりと蕾を膨らませ、花開くものです。そう急かせてはなりません。……それにヒロトがいる。彼に任せましょう」

 男性の言葉に男は返事をし、もう一度深く頭を下げた。


2009/11/29


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