イナズマ | ナノ

カトレア

01 グッバイ、アタシの安寧




 お昼を食べた後の5時限目はいつも眠くなる。普段通りの授業だったら寝てしまう所だけど、今日は生憎そうも言っていられなかった。

「男子ー、リレーの練習するから集まってー」
「よっしゃ、体育祭今年もA組が勝つぞ!!」

 ……そう今は体育祭のクラス練習中なのだ。アタシもリレーの選手に選ばれてしまい、嫌々此処にいる。

「飛鳥ー、またサボってる」
「んー。だって眠いんだもん」

 欠伸を噛みしめるアタシにいつも一緒につるんでいる友達、ちーちゃんは苦笑をすると隣に座ってきた。……木陰で過ごすのは中々気持が良い。アタシ達はぼんやりと校庭で練習をするクラスメイトを見つめていた。

「あれ、飛鳥そのピアスどうしたの?」
「あぁ、これ? なんか兄貴がお守りだから外すな。とか言ってイキナリくれてさ。……誕生日でも無いのに珍しいよねー」

 左耳に付けられたピアスにちーちゃんが触れると、でも飛鳥のお兄ちゃんカッコイイよね。とか言ってきた。あんな兄貴何処が良いのだろか? アタシには全く分からない。

「ねー、ちーちゃん」
「なに、飛鳥?」
「まだアタシが出るのって練習しないよね?」
「うん、まだ当分は無いと思うよ」

 そっかー、有難う。とアタシはちーちゃんに笑いかけると、木に寄りかかり瞼を閉じた。途端にちーちゃんから非難の声が上がる。

「えー飛鳥、こんな所で寝るの?」
「んーもう無理。出る番になったらちーちゃん起こしてー」

 少し小言を言ってきたちーちゃんだったけど、直ぐに諦めた様でしょうがないなー。と言ってくれた。(流石ちーちゃん。アタシの性格をよく分かっていらっしゃる)
 ……それに今日はイナズマイレブン2の発売日。イナズマイレブンは“超次元サッカー”と銘打つなんとも凄まじいサッカーアニメだ。
 ――初めはサッカーが主体の普通のアニメだと思っていたのに、“超次元サッカー”と銘打っている通り、キャラの使う技、キャラの身体能力、何もかもがぶっ飛んでいた。そのぶっ飛び具合にちーちゃんに教えて貰ってからは見事にハマってしまい、ちょくちょく見ている。
 この練習が終わったらちーちゃんと一緒に予約していたソフトを貰いに行くのだ。あー凄く楽しみ。
早く練習終われば良いなぁ。とか考えながらアタシは今度こそ深い眠りについた。

――これから起きることを、この時のアタシは知る由も無かった。……これがとんでもない、あの世界へとアタシを引きずりこんでしまった事さえも。


2009/10/05


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