ぬくぬく







 無性に、人肌恋しくなるときがある。

 それはきっと、あたたかさを求めているのだろう。

 誰か…愛しい人の体温を感じるだけで、こんなにも心は落ち着くものなのだ。

「…景時さん?」

「………」

 いつもなら「ご、ごめん…!!」と言って、慌てて離れるというのに、今回は何も言わず、ただただ抱きしめている。

「…何かあったんですか?」

「……落ち着くんだ」

 景時はそう呟いて、一層抱きしめる力を強めた。

「…望美ちゃんのあったかさが、鼓動が…オレを安心させてくれる……ちょっと今日ね、嫌なことあったんだけど…これで冷静になれた」

 そこで、景時は望美を解放した。「ありがと〜」と言う彼は、いつものへにゃっとした笑顔だ。

「……いつでも」

「へ?」

「…充電が切れたら、いつでも、私を呼んでください。…どこにいても、絶対助けに行きます!!」

 そんな男勝りな発言に、景時は内心苦笑しながらも、自分のためにここまで宣言してくれる彼女を、とても愛しく思った。

「……ち、ちなみに…ときどき、私にも充電が必要です…」

照れながらそう言う彼女に、景時はにこりと笑った。

「…オレ、充電しても…長く保たないんだよね〜」

「……」

「…もう、力がなくなっちゃった…また充電しなきゃいけないな〜」

 ちょっとした意地悪でそう言うと、望美は何も言わず景時に飛び込んだ。

「わ!?」

 てっきり照れるだろうと思っていた景時は、意表をつかれて後方へ倒れそうになるが、鍛えぬかれた腹筋は、きちんと二人分の体重を支えることに成功した。

「の、望美ちゃん?」

「…私も、充電しなきゃならなかったので…」

 目が合うと、同時に笑みがこぼれた。

「じゃ、一緒に充電しよっか」

 抱きしめた互いの身体は、なんだかあたたかかった。





end

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