世界にさよならを | ナノ


ドンドンッ…ドンッ…!

やっと和やかな雰囲気が漂う化学室の中に再び糸をピンと張ったような緊張が張り詰める
扉を叩く音に笑みを浮かべていた4人は顔を引きつらせ音のする準備室の方に目を向けた

骸骨との戦いの前から、扉の前には机や椅子でバリケードがはられていたが、その内側から叩く音らしい
腰が抜けて座り込んでいた花子だったが、剣を支えに急いで立ち上がった

扉を強く叩く音は化学室だけでなく廊下にまで響いた
花宮は原に教室の扉閉めるように目配せをした

「っ…なみやっ!花宮!俺はここだ!花宮!!」

扉を叩く音と共に、次第に掠れたような男の声が準備室の向こう側から聞こえた
この声って…

「…ザキか?」
「!古橋!瀬戸や原もいるのか?!ここから出してくれ!」
「なんでザキそんなとこいんのー?ったく…」

眉根を寄せて呟いた古橋の声に向こう側の【山崎】の声が明るくなった
原が面倒くさそうに扉に向かう腕を古橋が掴む

訝しげに振り返る原に花宮は首を横に振り、扉の近くまで歩み寄った
「お前は誰だ?」
「は?!花宮何言ってんだ?!俺は山崎だよ!」
「名前は?」
「弘だよ!寝ぼけてんのか?!」
「所属学校は?」
山崎の焦ったような声を無視して冷たい声で淡々と質問を続ける花宮
扉の向こうの【山崎】はそんな花宮に戸惑ったようなすがるような声で応える
「早く出してくれよ!嘘だと思うだろうが此処にはバケモンがいるんだよ!ふざけてないで助けてくれ!なぁ?!」
チームメイトの必死な声に原や古橋の顔色が曇る
だが花宮は質問をやめない
先程の化物の前例がある、もう簡単には信じられないのは当たり前だ

泣き出しそうな必死な【山崎】の声聞いているとさっきの化物と違い、感情や思いが在る気がする
さっきの化物の【山崎】には花宮というチームメイトの記憶も山崎君自体の記憶もなかった
名前も学校名もわかってるし、もしかしたら…
尚も質問を続けている花宮に近づき、扉の向こうに聞こえるように呼びかける

「ねぇ、貴方山崎くんなんだよね?」
「!アンタは誰だ!?」
「私は名無しの花子。みんなと同じ、此処から出たい仲間だよ」

隣りにきて躊躇なく名乗る花子を咎めるように声をかけようとした花宮だが、花子の「大丈夫」という声を出さない呟きに口を噤む

「山崎くんに最後の質問。花宮くんの眉毛の形は?」
「はぁ?!そんなの…オタ○ロまろ眉毛だろ!」
「「ブフォwwww」」
「オイふざけんな」
原と同時に噴き出した花子の頭をベシリと花宮が叩く
未だに腹を抱えてヒイヒイ笑っている原の横で、いつも無表情の古橋の口元も心なしか引き締まり肩が震えているように見える
「ックク…だってさ!そんなん見てなきゃわかんないよね?」
笑いすぎて滲んだ涙を拭きながら花宮に「ね?」と問いかける
花宮も内心気付いてはいたのだろう、不満そうな顔をしながらも(十中八九オタマ○呼ばわりの件だろう)山崎に声をかけ積み重なるテーブルに手をかける
花宮の持つテーブルを一緒に動かす
扉が開くようになり、この不気味なゲームが始まってやっと霧崎第一のメンバーが揃ったのだった

(集まり始めるピース)(差し込む光)
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